第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 12.チーム医療

[OD1001] 10.チーム医療.看護管理

[OD1001-05] 緊急入院し一般病棟へ転棟した患者と転棟後ICU・HCUへ計画外入室した患者のMEWSと基礎疾患の実態

石橋 恵美1、○梅木 夏帆1、高橋 美沙子1、神谷 恵1 (1. 島根県立中央病院看護科)

Keywords:MEWS、急変予測、緊急入院

【目的】
 高度救命救急センターを有するA病院では、時間外の緊急入院は特定の病棟(以下、B病棟とする)で受け入れ、翌日以降一般病棟へ転棟している。その中で転棟後に病状が悪化し、ICU・HCUへ計画外入室となる状況が発生しているが、その患者は転棟前からバイタルサインに異常をきたしていたのではないかと推測した。そこで、状態変化の兆候を早期に捉え、転棟後の病状悪化を防ぐため、転棟後一般病棟で入院継続した患者と、ICU・HCUへ計画外入室患者の違いを明らかにすることを目的としてMEWSと基礎疾患について調査した。

【方法】
電子カルテ及び後利用システムを利用した後方視的調査を行った。緊急入院患者の年齢、性別、ICU・HCUへの計画外入室の有無、入院時の主病名、基礎疾患の有無、救急外来でのMEWSの合計点、B病棟から一般病棟へ転棟する直前のバイタルサインをMEWSへ変換した。MEWSの5項目ごとの点数及び合計点について一般病棟で入院継続した患者(以下、状態安定群)とICU・HCUへ計画外入室した患者(以下、状態悪化群)の2群間でt検定を行った。基礎疾患と状態変化の関連についてはχ検定を行った。分析には統計ソフトSPSS ver21を使用し有意水準は5%未満とした。

【倫理的配慮】
島根県立中央病院臨床研究・治験審査委員会の承認を得て実施した(承認番号 中臨R20―045)。

【結果】
調査対象者は1,428名で、そのうち状態安定群は1,382名、状態悪化群は46名だった。救急外来でのMEWS合計点の平均は、状態安定群が1.72±1.41点、状態悪化群が1.52±1.49点だった。一般病棟転棟前のMEWS合計点の平均は,状態安定群が1.48±1.00点、状態悪化群が1.72±1.26点だった。項目別の平均点は、呼吸数は状態安定群が1.10±0.47点、状態悪化群が1.09±0.41点、心拍数は状態安定群が0.11±0.37点、状態悪化群が0.35±0.77点、収縮期血圧は状態安定群が0.11±0.33点、状態悪化群が0.09±0.28点、意識状態は状態安定群が0.10±0.39点、状態悪化群が0.11±0.31点、体温は状態安定群が0.07±0.37点、状態悪化群が0.09±0.41点であり、心拍数で有意差があった。また、基礎疾患を有する割合は状態安定群52.1%、状態悪化群78.3%で有意差があった。基礎疾患別では、「心疾患」「脳血管疾患」「糖尿病」「高血圧」に有意差があった。

【考察】
 今回の調査では、MEWSの合計点のみでは状態悪化の前兆を捉えることができなかったが、心拍数スコアには有意差があり、項目ごとのスコアを評価することで、状態悪化の前兆に気づくことができるのではないかと考えた。状態悪化群は救急外来でのMEWSより、転棟前のMEWSが高かったことから、状態が悪化傾向にありながらも転棟していたことが分かった。救急外来だけでなく、病棟でもMEWSを用いて観察し点数化することで、状態の変化を捉えやすくなり、一般病棟への転棟時期を検討するなどICU・HCUへの計画外入室の予防に活かすことができると考える。また、基礎疾患のうち「心疾患」「脳血管疾患」「糖尿病」「高血圧」が状態悪化のリスク因子であることも分かった。MEWSと併せて、これらの基礎疾患の有無も情報共有することで急変リスクを早期に察知し、看護ケアにつなげることが可能となると考える。