第23回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

オンデマンド配信講演

第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護①

[OD101] 1.救急外来看護①

[OD101-01] ER型救急外来における夜勤帯入院患者のER滞在時間に影響を与える要因に関する研究

○吉岡 優佑1 (1. 洛和会音羽病院 救命救急センター・京都ER)

Keywords:ER滞在時間、ER型救急外来、夜勤帯入院患者

【目的】
ER型救急外来では様々な患者を受け入れ、いつ患者が搬送されても適切なケアを提供する必要がある。今後も増加が予想される救急搬送に対し、ER滞在時間の短縮は不可欠である。ER滞在時間が短縮できれば、新たな患者の受け入れが可能となり、早期に病棟へ入院することは患者自身の安楽に繋がる。よって本研究ではスタッフが少なくなる夜勤帯での入院患者のER滞在時間を調査し滞在時間に影響を与える要因を明らかにする。
【方法】
調査期間は2020年3月9日から5週間。対象はERを受診し夜勤帯に入院した患者。対象のER滞在時間、来院した時間帯、ER混雑状況、ER入室から病棟へ入院候補伝達にかかった時間、検査項目、重症度、入院病棟を調査した。またERリーダー看護師へ対象の診療において、ER滞在時間に影響を与えた要因に関するアンケートを実施。
測定された項目間の関連をX2検定、Wilcoxon/Kruskal-Wallis順位和検定、Spearmanの順位相関係数を用いて分析し、P値は両側0.05未満を統計学的な有意差ありとした。
本研究は当該施設の倫理審査委員会で承認を得て行った。研究参加への同意はオプトアウトを行い調査にあたり個人が特定されないように記号化し個人情報を保護した。
【結果】
調査期間中の夜勤帯入院患者は211人。ER滞在時間の最大値は387分、中央値150分、最小値は27分。
ER入室時間帯別のER滞在時間の中央値は、日勤帯186分、準夜帯145分、深夜帯122分。ER入室時間帯とER滞在時間の関係性はP=0.0001であり、ER滞在時間は日勤帯が有意に長かった。
患者来院時の時間帯別ER混雑状況はP=0.0001であり日勤帯で有意に混雑していた。
入院病棟別のER滞在時間の中央値は、ICU128分、救急病棟154分、SCU128分、小児科病棟119分、一般病棟150分。入院病棟とER滞在時間の関係はP=0.03で有意差あり。ICU・SCU・小児科病棟入院患者のER滞在時間が有意に短かった。
重症度別のER滞在時間の中央値は救急車143分、蘇生118分、緊急145分、準緊急192分、低緊急156分と重症度が高い患者のER滞在時間は短かった(P値0.0007)。
入院候補伝達時間とER滞在時間の関係はP=0.0001であり有意な正の相関があり【ER滞在時間=124分+0.7×候補で伝えた時間】という式が得られ、入院候補を早く病棟に伝えれば、それだけ早くERを退室出来ることがわかった。
ERリーダー看護師へのアンケートの結果は、要因「なし」122件、「あり」89件。そのうち42件が「医師の方針・診断待ち」であった。
検査項目ではCT、ECG、MRI、エコーを行うと27-37分ER滞在時間が延長し、対象患者の80%以上で採血・点滴・XP・CT・ECGが実施されていた。
【考察】
日勤帯でERが混雑するため日勤帯入室患者のER滞在時間が長かった。日勤帯の混雑により対応が夜勤帯にずれ込んでいるためと考える。よって遅出勤務の医師・看護師の配置が必要である。
病棟別ER滞在時間ではICU・SCU入院患者、重症度別ER滞在時間では重症度が高い患者のER滞在時間が短かった。これは緊急を要すため医師、看護師のマンパワーが集中すること、検査が優先して行われるためER滞在時間が短縮したと考える。
入院候補を早く病棟に伝えれば、それだけ早くERを退室出来ることがわかった。このことからER滞在時間の短縮のために、ER看護師は緊急度・重症度に対する判断力と主体的に行動する力が必要であると示唆された。