第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護①

[OD101] 1.救急外来看護①

[OD101-02] A病院救急外来受診後の患者への救急外来看護師による帰宅時支援の実際

○木村 恵美1、牧 和久1、堀 克也1、早川 由紀美1、黒﨑 祐也1、東條 紀子2 (1. 長岡赤十字病院、2. 新潟県立看護大学)

Keywords:帰宅時支援、救急外来、救急外来看護師

【目的】救急外来では、来院方法を問わず搬送患者の約8割は受診後に帰宅している現状がある(厚生労働省2015)。しかしながら医学的には救急外来から帰宅できる状態であっても、患者個々の社会背景が異なり、様々な状況に応じる必要があり、帰宅時の支援は救急外来看護師の個々の力量に任されている。本研究は救急外来受診後の患者への救急外来看護師による帰宅時支援の実際を明らかにする。
【方法】調査対象:A病院救急外来勤務の同意を得た看護師、研究デザイン:質的帰納的方法、調査期間:2020年4月から2021年2月、調査内容:自記式質問紙調査及び半構成面接調査を1人30分程度行った。研究対象者が過去の経験を想起するのには時間を要すると考えられたため、自記式質問紙により研究対象者にあらかじめ記述してもらった。インタビューの内容を質問紙に示すことで、研究期間に研究対象者が体験する指導内容についても,整理をしてもらう期間とした。さらにインタビューにより帰宅時支援の実際を詳細に話してもらった。分析は、事例の概要・状況等を整理し、インタビューは逐語録に起こし、帰宅時支援の内容に関する部分を抜き出して研究者間で類似性と相違性に基づいてカテゴリー分類を行った。
【倫理的配慮】調査対象者へ研究目的、自由意思による調査への参加や拒否、匿名とすること等を文書と口頭で説明し、同意を得た。各データの匿名性および機密性保持を遵守した。なお、研究実施者の所属施設の病院倫理審査(第200610号)及び看護部倫理委員会(2020-1-②)の承認を得た。
【結果】救急外来看護師15名よりデータを得られた。帰宅時支援に難渋した事例は、34事例で内訳として高齢患者が23事例、うち17事例は後期高齢患者であった。患者の主疾患は内因性疾患8、骨折7、頭部外傷5、精神疾患4、等であり、患者の急激なADLの低下と介護の対応に労力を費やす事例がみられた。
インタビューの分析からは、198コード、53サブカテゴリー、16カテゴリーが抽出された。
以下、カテゴリーは《 》で示す。
抽出されたカテゴリーは《診療補助に有効な情報をカルテや社会背景から収集》《病態を予測し患者の状況を医師に説明》《今後起こりうることを予測し帰宅の可否を評価》《帰宅可能となった患者・家族へのインフォームドコンセント》《患者の症状に応じた帰宅方法を提案》《帰宅に向けて問題が解決されるよう調整》《帰宅に向けて関連機関と連携》《帰宅後に出現が予測される症状の対処方法を説明》《対象に適切と思われる媒体での説明》《自宅での医療処置・医療管理方法の説明》《実際の活動状況や処置内容を家族に見せながら説明》《自宅療養のためにキーパーソンとなり得る人を見つけ協力を依頼》《家族へ自宅療養を可能にする方法や社会資源を説明》《症状増悪時の受診継続の必要性を説明》《帰宅時および帰宅後の安否確認》《継続した医療・看護が提供できるようスタッフ間や他部門と協力》であった。
【考察】救急外来看護師は、限られた時間の中でアセスメントし、次の受診までの療養に対する患者家族の生活を予測して指導・教育を行っていた。さらに社会資源を活用して他機関・多職種へつなげて帰宅時支援をしていることが明らかになった。1.救急外来看護師は帰宅後を見据えた患者および介護力等の社会的背景をふまえたアセスメント能力を有すること2.社会資源の知識をもとに速やかに他機関・多職種と協働できるシステムを構築する必要性が示唆された。
本調査は、2020年度新潟県立看護大学看護研究交流センター地域課題研究助成を受けて行った研究の一部である。