第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護②

[OD102] 1.救急外来看護②

[OD102-02] 近隣高齢者施設におけるアドバンスケアプランニングの現状調査と救急看護師のかかわり

道端 育子1、○塚原 竜太1、池田 綾1、渡辺 岳人1、増山 純二2 (1. 福岡和白病院、2. 学校法人巨樹の会大学準備室)

Keywords:アドバンスケアプランニング

目的
 近年、人生会議としてアドバンスケアプランニング(以下ACP)が推奨されている。しかしながら、厚生労働省が行っている「人生最終段階における医療に関する意識調査」ではACPの認知度は低く、普及率も高くないことが現状である。
 A病院救急科においてもACPの取り組みは重要であると考え、近隣施設でのACP普及の現状と終末期に関する医療ニーズの調査を行い、救急看護実践について検討した。
方法
1.A地域の施設入居中の65歳以上の高齢者(要介護3以上は除外)144名(有効回答率71.6%)を対象に、アンケートを実施。
2.ACPの現状調査結果にある3項目に関して4段階のリッカート尺度と「要介護・支援なし」「要支援1・2」「要介護1・2」3群間の比較検討(Bonferroni検定)を行い有意水準は5%とした。
倫理的配慮
 A病院の倫理委員会へ研究計画書を提出し承諾を得た。
結果
 アンケートの結果、男性27.1%、女性72.9%、平均年齢82.7歳(±7.65)であった。「人生最終段階における医療・療養について考えたことがあるか」「死が近い場合の受けたい医療・療養や受けたくない医療・療養について話し合ったことがあるか」「ACPについて知っているか」は、要介護1・2を受けている高齢者が他の2群と比較して有意に低かった。
「終末期の医療についての書面作成について賛成か」は3.38±0.82、「代理意思決定者を決めることについて賛成か」は4.0±0.00、「代理意思決定者を決定している」は1.63±0.48、「ACPの取り組みについて賛成か」は3.52±0.68であった。
 終末期を迎える場所は、医療施設70.1%で、容態が変化した時に救急車を要請する質問については75.8%で要請する回答を得た。しかし、胸骨圧迫を希望しない80.6%、人工呼吸器の装着を希望しない85.4%、昇圧剤を希望しない79.9%であった。また、疼痛、苦痛緩和に対する医療行為においては、86.8%は希望すると答えている。
考察
 平成30年に実施された厚生労働省の意識調査報告の内容と比較しても、同じような傾向を示していた。ACPの取り組みについては基本的に賛成であるが、代理意思決定者の決定や人生会議の実際、書面の作成など積極的な行動には移っていない状況であった。要介護を受けている高齢者は、「人生最終段階における医療・療養についての関心」が低く、「家族や介護職員との話し合い」についても行っていないことが示唆された。
 今回調査対象を施設入所中の高齢者にしたためか、終末期を迎える場所の質問に対し、病院との回答が多く、容態の変化時の対応として救急車を要請する回答が多かった。しかし、救命処置は希望せず、疼痛や苦痛の緩和を希望する医療ニーズが高いことを示唆された。このように、ACPが普及しない状況下での高齢者の搬送があることが今回の調査でもわかり、特に、介護認定を受けている高齢者がこのような状況に陥る可能性が高いことがわかった。そのため、救急外来で受け入れる救急看護師の役割として、代理意思決定への支援は非常に重要となってくる。また、厚生労働省は救急医療、消防、在宅医療機関が、患者の意思を共有するための連携ルール等の策定を提案している。これからは、救急看護実践の一つとして、施設の介護職、在宅医療を担う訪問看護師との連携を図り、患者の意思を共有するための連携ルールを具体化していき、ACP普及への取り組みを積極的に行っていかなければならない。