第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護②

[OD102] 1.救急外来看護②

[OD102-03] アナフィラキシーに対する看護実践報告~COVID-19ワクチン接種による副反応事例を通して~

○増田 望1、小堀 侑美香1、藤井 満貴1、橋口 尚幸2 (1. 順天堂大学医学部附属順天堂医院 看護部 救急PCセンター、2. 順天堂大学医学部附属順天堂医院 救急科)

キーワード:アナフィラキシー、COVID-19ワクチン接種、副反応

【はじめに】当院では、3月よりファイザー社のコミナティを医療従事者に対し3週間の間隔をあけ、のべ約7000人の職員が2回の接種を行った。ワクチン接種は、体内に異物を投与し、免疫反応を誘導し、感染症に対する免疫を付与することが目的として行われるため、効果とともに副反応が起こり得る。当院では、副反応を発症し受診に至った職員の受入れ先として、救急PCセンターで対応した。今回、副反応に対してのケアを振り返り、統一した看護を提供できるように勉強会やパスの作成を実施したことで明らかとなった、副反応(アナフィラキシーを含む)に対する看護の課題についてここに発表する。
【目的】ワクチン接種で生じた副反応により受診した職員の症例を振り返り、今後、受診した患者に対する看護について活用できるように検討することを目的とする。
【方法】2021年3月から2021年4月にかけてワクチン接種した職員のべ約7000人のうち、副反応により救急PCセンターを受診した職員の症例を振り返り、今後の看護を検討する。
【倫理的配慮】患者個人を特定しないよう配慮し、使用した内容は本研究以外では使用せず保管庫にて管理した。
【結果】当初、ワクチン接種による副反応を起こした職員の受入れは、既存の救急PCセンターで運用されている看護記録を元に対応していた。しかし、想定を上回る0.3%の職員のアナフィラキシーを疑う受診があった。そこで救急PCセンターの看護師全員への現時点でのアナフィラキシーに対する知識を確認した上で、統一した観察・看護を提供できるようアナフィラキシーに関する勉強会を実施した。さらに、上記に加えて看護記録の簡易化を図るためにアナフィラキシー用のパスを新規に作成し運用した。勉強会実施前後、2回における調査を集計し比較したところ、アナフィラキシーショックによる症状がより具体的になり、アナフィラキシーの発症時間の理解に関する分散が小さくなった。しかし、アナフィラキシーショックの患者に対する看護については、いずれの調査においても処置対応に関する事が多く、看護が少ない状態であった。また、新規に作成したパスにはアナフィラキシーに関する主要な観察項目や処置内容があらかじめ記載されており、必要に応じて個々で追加して記載できるようにした。必要事項が記載されている事により、アナフィラキシー患者が来院した際にどの看護師もそのパスに則り対応する事ができた。
【考察】日本国内におけるアナフィラキシーの発生割合は0.0005%と示されていた。しかし、想定を上回る職員の受診数であったことで、アナフィラキシーに対する看護を見直す必要があると考え、勉強会を実施した。それにより、どのような症状がアナフィラキシーに値するのか、またアナフィラキシーショックを起こした患者は迅速に対応をしなければいけない、という知識の定着に繋がったと考えられる。また、簡便にアナフィラキシー患者に対して対応することができるパスを用いることで、速やかに対応し、観察できるようになったことで、看護師の経験年数やスキルによる差を少なくし、統一した看護の提供に繋がったと考える。処置対応においては、当初と比較し対応が改善されたが、看護の視点で考えると、どの看護師も乏しい状態であった。今後、職員だけでなく一般市民が副反応(アナフィラキシーを含む)で受診することを想定し、迅速な対応ができるように看護師への教育を継続していく必要がある。