第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護②

[OD102] 1.救急外来看護②

[OD102-05] 高齢者のセルフ・ネグレクトに関する文献検討 -セルフ・ネグレクト患者に対する救急看護師の示唆-

○八田 圭司1、前田 晃史1、佐藤 美奈1、宮本 いずみ2 (1. 市立ひらかた病院、2. 久留米大学 医学部 看護学科)

Keywords:セルフ・ネグレクト、高齢者、救急外来

【目的】 救急現場において,セルフ・ネグレクトの高齢者と遭遇する頻度は増加しており,救急看護師はセルフ・ネグレクトに関する知識を身につけて看護実践することが求められる。本研究の目的は,高齢者セルフ・ネグレクトの定義や特徴,救急外来でのセルフ・ネグレクトの実態などを文献検討で明らかにすることである。
【方法】 医学中央雑誌web版医中誌(Ver.5)とPub Medをデータベースとして用いて,「救急医療サービスandセルフネグレクトまたはセルフ・ネグレクト」「救急医療サービスand高齢者虐待」「高齢者虐待andセルフ・ネグレクトまたはセルフネグレクト」「elderly patients」and「emergency medicine」「elderly patients」and「emergency departement」「selfneglect」and「elderly patients」「selfneglect」and「emergency medicine」を検索語にし,発表年数を指定せず検索した。
【倫理的配慮】 倫理的配慮は,文献検討にて審査受けていない。
【結果】 検索した結果,174件の文献が抽出され,目的にあう33件で文献検討した(7月5日時点)。
多くが社会福祉分野の文献であり,セルフ・ネグレクトをNational Center for Elder Abuse(NCEA)の定義する自分自身の健康または安全を脅かす行為に特徴づけられ,「十分な食事,水,衣服,住居,安全,個人衛生及び必要とされる医療の提供を拒否もしくはこれらが不足している」が用いられていた。セルフ・ネグレクトの要因として,認知症,精神障害,身体障害に加えて,身体や環境の不衛生,近隣や親族とのトラブル,福祉サービスの利用や医療施設の受診拒否などがあり,これらの要因が一つではなく,複数有している特徴があった。セルフ・ネグレクトを引き起こすプロセスは,貧困やアルコールをはじめとする依存症など個人要因に配偶者の死などの危機的なライフイベントが加わり,社会的な孤立とセルフケア能力の低下が生じた結果,セルフ・ネグレクトになっていた。
 救急外来の実態は,セルフ・ネグレクトが重度になるほど救急の利用率が高かった。救急の医療従事者は潜在的な高齢者虐待やセルフ・ネグレクトの特定する立場にあるが,特別な訓練を受けていない,ソーシャルワーカーとコミュケーションが十分でないなどの理由でセルフ・ネグレクトが放置されていた。
【考察】 高齢者の身体や環境の不衛生や近隣とのトラブルなどがきっかけとなり,セルフ・ネグレクトが問題となっている。医療分野においてはセルフ・ネグレクトの高齢者は医療機関の受診を拒否するため,地域住民や福祉事所職員からの通報で搬送され,救急外来で発見されるケースが多い。救急外来の医療者は,セルフ・ネグレクトと接触する機会が多く,正確にセルフ・ネグレクトを拾い上げ,介入しなければいけないが、医療分野での定義や概念分析は十分でないため,セルフ・ネグレクトへの介入ができていない現状がある。そのため社会福祉分野の先行研究を参考に,セルフ・ネグレクトを発見できるスクリーニングツール開発や,医療や看護を拒否するセルフ・ネグレクトへ実践できる看護を構築していく必要があると考える。