第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護③

[OD103] 1.救急外来看護③

[OD103-01] 帰宅時支援において救急外来看護師が抱く不安と課題

○堀 克也1、木村 恵美1、牧 和久1、早川 由紀美1、黒﨑 祐也1、東條 紀子2 (1. 長岡赤十字病院 救急外来、2. 新潟県立看護大学)

Keywords:帰宅時支援

【目的】救急外来では、年齢や診療科を問わず、多くの搬送患者を受け入れており、救急外来看護師には多様な患者への看護実践能力が求められている。なかでも、搬送患者の約8割は受診後に帰宅している現状(厚生労働省2015)があり、救急外来では帰宅時の支援が多くを占めている。A病院の帰宅時の支援は、救急外来看護師の経験値に関わらず個々の力量に任されている。帰宅時に渡す規定は一部存在するが、多くは限られた時間の中で、困難な事例も個別性に沿ったかたちで支援している。本研究はA病院においてこのような状況下においての帰宅時支援にかかわる救急外来看護師が抱く不安と課題を明らかにする。
【方法】調査対象:A病院救急外来勤務の同意を得た看護師、研究デザイン:質的帰納的方法、調査期間:2020年4月から2021年2月、調査内容:半構成面接調査により、救急外来受診後に帰宅する患者への帰宅時支援について事例を想起してもらい、不安に感じたこと、課題に思っていることについて自由に話してもらった。分析は、インタビューを逐語録に起こし、帰宅時支援のかかわりでの不安、課題に関する部分を抜き出して研究者間で類似性と相違性に基づいてカテゴリー分類を行った。
【倫理的配慮】調査対象者へ研究目的、自由意思による調査への参加や拒否、匿名とすること等を文書と口頭で説明し、同意を得た。各データの匿名性および機密性保持を遵守した。なお、研究実施者の所属施設の病院倫理審査(第200610号)及び看護部倫理委員会(2020-1-②)の承認を得た。
【結果】救急外来看護師15名よりデータを得られ、経験診療科は1~7診療科であった。帰宅時支援で想起された事例は、34事例で内訳として高齢患者が23事例、うち17事例は後期高齢者であった。 
インタビューの分析から、不安に関して56コード、12サブカテゴリー、4カテゴリーが抽出された。課題に関して85コード、14サブカテゴリー、5カテゴリーが抽出された。
以下、カテゴリーは《 》で示す。
不安として抽出されたカテゴリーは《医師の帰宅指示に対して帰宅させて良いのか不安》《入院適応にならない患者を帰宅させる葛藤》《治療拒否や受診行動継続が得られない患者への帰宅時介入の不安》《個々の看護師に帰宅時の介入を任される不安や戸惑い》であった。
課題として抽出されたカテゴリーは《帰宅時支援への救急外来スタッフ間の共通認識とサポート体制の確立》《他職種・他機関へ時間外に連携できるシステムの構築》《介護サービス等,専門機関に迅速につなぐ方策の検討》《限られた時間と人員で個別性を考慮した帰宅時支援の実践》《様々な患者や家族に対応できるよう自己研鑽と経験の活用》であった。
【考察】救急外来看護師は帰宅時支援において、診療を行った医師の指示、個々の看護師の裁量による介入に対して不安や戸惑いを感じていることが明らかになった。一方で、課題においては、救急外来看護師が自己研鑽していくことに加えて、帰宅時支援を個々の看護師の実践と捉えるのではなく、スタッフ間や他職種・他機関連携など、チームで共有してかかわっていく必要性が示された。救急外来看護師の不安が軽減されるよう、チームアプローチとしてシステム構築や新規パンフレット作成など、帰宅時支援について共有できる媒体の開発の必要性が示唆された。