[OD103-03] 当院救命救急センターへ搬送された患者の初期バイタルサインとICU・SCU入室との関連
Keywords:救命救急センター、バイタルサイン
【目的】バイタルサインは、看護技術により得られる臨床診断上でも重要な数値である。バイタルサインと死亡率の関連を調査した先行研究は多いが、救命を第一目的とする救急初療において、バイタルサインとICU・SCU入室との関連が明らかになれば、患者死亡の回避に有効であると考えられる。救急患者の到着と同時に初期バイタルサインを測定する看護師が、集中治療の可能性を判断できることは、予測性・準備性・即応性を持った看護実践の動機付けにつながる。以上から今回、当院救命救急センターへ搬送された患者の初期バイタルサインとICU・SCU入室との関連を調査した。
【方法】2017年4月〜2018年3月に当院救命救急センターへ搬送された18歳以上の患者を対象とした。対象者の電子カルテから、ICU・SCU入室の有無・バイタルサイン・年齢・性別・病因分類を収集した。対象者のICU・SCU入室と初期バイタルサインや対象者属性との関連性をロジスティック回帰分析により解析した。
本研究は、群馬大学倫理審査委員会の承認を得て実施し、オプトアウトにより研究への不同意の意思を確認した。患者個人が特定されないよう配慮した。
【結果】対象期間に搬送された18歳以上の患者は2922名であった。来院時心肺停止(102名)、呼吸回数の記録不備(661名)などを除外し、解析対象者を1917名とした。ICU・SCU入室との関連について、各々のオッズ比(95%信頼区間)は、前期高齢者:2.32(1.33-4.05)、内因性疾患:1.49(1.01-2.20)、GCS13以下:1.89(1.20-2.99)、GCS8以下:5.11(2.95-8.85)、心拍数110-120/min:2.13(1.13-4.05)、収縮期血圧90mmHg未満:3.92(1.89-8.12)、収縮期血圧180mmHg以上:2.92(2.00-4.25)、酸素投与あり:2.38(1.58-3.59)だった。呼吸回数26回以上、酸素投与下でSpO2値89%以下では、単変量解析でICU・SCU入室に関連を認めたものの、多変量解析により調整を行うと関連は認めなかった。
【考察】初期バイタルサインとICU・SCU入室との関連は、GCS・心拍数・収縮期血圧で関連を認めた。SpO2値での関連は認めなかったが、酸素投与下でSpO2値が89%以下となる症例、呼吸回数26回以上の症例でICU・SCU入室リスクが高い傾向があった。救急患者における1日死亡率はSpO2値、収縮期血圧、体温、意識、呼吸回数、脈拍数、年齢と関連があるとの既存の報告と同様に、初期バイタルサインの異常の多くがICU・SCU入室との関連を認めていた。医療チームの中で最も患者の身近にいる看護師が、初期バイタルサインからリスクを予測し発信者となることで、「救命」という共通目標のもと、集中治療開始までの時間短縮に向けた協働につながると考えられる。患者急変予測に呼吸回数の増加が関連している報告がある一方で、本研究では有意な関連を認めなかった。呼吸回数はショックや発熱など、他の因子に左右されること、本研究では他の数値と比較し、呼吸回数の記録不備が多かったことなどが影響を与えた可能性がある。SpO2値は、酸素投与の影響を受けるため、吸入酸素濃度と共に再検討を行う必要があることが示唆された。
本研究は、初期バイタルサインとICU・SCU入室との関連を見たものであり、患者の病態や疾患を考慮したものではない。看護師として、バイタルサインや患者属性を意識的に捉え、患者の身体所見や各検査結果を活用しながら看護実践していくことが重要であると考える。
【方法】2017年4月〜2018年3月に当院救命救急センターへ搬送された18歳以上の患者を対象とした。対象者の電子カルテから、ICU・SCU入室の有無・バイタルサイン・年齢・性別・病因分類を収集した。対象者のICU・SCU入室と初期バイタルサインや対象者属性との関連性をロジスティック回帰分析により解析した。
本研究は、群馬大学倫理審査委員会の承認を得て実施し、オプトアウトにより研究への不同意の意思を確認した。患者個人が特定されないよう配慮した。
【結果】対象期間に搬送された18歳以上の患者は2922名であった。来院時心肺停止(102名)、呼吸回数の記録不備(661名)などを除外し、解析対象者を1917名とした。ICU・SCU入室との関連について、各々のオッズ比(95%信頼区間)は、前期高齢者:2.32(1.33-4.05)、内因性疾患:1.49(1.01-2.20)、GCS13以下:1.89(1.20-2.99)、GCS8以下:5.11(2.95-8.85)、心拍数110-120/min:2.13(1.13-4.05)、収縮期血圧90mmHg未満:3.92(1.89-8.12)、収縮期血圧180mmHg以上:2.92(2.00-4.25)、酸素投与あり:2.38(1.58-3.59)だった。呼吸回数26回以上、酸素投与下でSpO2値89%以下では、単変量解析でICU・SCU入室に関連を認めたものの、多変量解析により調整を行うと関連は認めなかった。
【考察】初期バイタルサインとICU・SCU入室との関連は、GCS・心拍数・収縮期血圧で関連を認めた。SpO2値での関連は認めなかったが、酸素投与下でSpO2値が89%以下となる症例、呼吸回数26回以上の症例でICU・SCU入室リスクが高い傾向があった。救急患者における1日死亡率はSpO2値、収縮期血圧、体温、意識、呼吸回数、脈拍数、年齢と関連があるとの既存の報告と同様に、初期バイタルサインの異常の多くがICU・SCU入室との関連を認めていた。医療チームの中で最も患者の身近にいる看護師が、初期バイタルサインからリスクを予測し発信者となることで、「救命」という共通目標のもと、集中治療開始までの時間短縮に向けた協働につながると考えられる。患者急変予測に呼吸回数の増加が関連している報告がある一方で、本研究では有意な関連を認めなかった。呼吸回数はショックや発熱など、他の因子に左右されること、本研究では他の数値と比較し、呼吸回数の記録不備が多かったことなどが影響を与えた可能性がある。SpO2値は、酸素投与の影響を受けるため、吸入酸素濃度と共に再検討を行う必要があることが示唆された。
本研究は、初期バイタルサインとICU・SCU入室との関連を見たものであり、患者の病態や疾患を考慮したものではない。看護師として、バイタルサインや患者属性を意識的に捉え、患者の身体所見や各検査結果を活用しながら看護実践していくことが重要であると考える。