第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護③

[OD103] 1.救急外来看護③

[OD103-04] 二次救急病院における入院となった患者の救急室滞在時間の調査からみえたこと

○倉持 幸代1 (1. 横浜新緑総合病院)

Keywords:救急室滞在時間

目的
A病院の2020年3月から2021年4月までの年間救急搬送数は2232件で入院1041件、不応需は1356件であった。救急外来の体制は、日中、内科・外科・整形外科・脳外科、他各科診療医師とし、夜間は内科・外科系・脳外科の3科で対応している。発熱対応の陰圧室を2床、一般用2床で稼働している。救急外来看護師は日当直で対応する「相乗り型」である。救急搬送受け入れ要請は脳卒中ホットライン以外看護師が対応、受け入れ可否については担当医師に一任している。A病院でも断らない救急をかかげ、全ての患者を受け入れることが理想ではあるが、対応困難事例、救急室満床時、人員不足時は断らざるを得ないなど、理想と現実の間には大きな乖離がある。限られた救急室を有効に活用することを目的に、救急室滞在時間を調査し、何に時間がかかっているのか、原因はあるのか、救急看護師として取り組むべき課題を明らかにすることとした。
倫理的配慮
看護部倫理委員会の承認を得た。収集したデータは個人が特定されることがないよう厳重に管理する。
方法
地域連携救急応需データ、外来医師記録、看護記録より入院となった年齢、各科(消化器内科・消化器外科・整形外科・内科・脳外科)の滞在時間の調査と検査内容(超音波・造影CT・MRI・手術出棟)に関連があるのか、また長時間滞在の原因を調査した。
調査期間:2021年1月~2021年3月
対象:救急搬送され入院した患者250名
分析方法:診療科の滞在時間の差をみるためにt検定を行った。滞在時間は2.5時間をカットオフとし診療内容に差があるのかフィッシャーの直接確率検定にて分析した。
結果
 2021年1月から3月までの救急搬送された患者は518件であり、その内入院になった患者は250名。患者の平均年齢は74歳(±15)。滞在時間:消化器内科中央値1時間36分、平均1時間39分、消化器外科中央値1時間42分、平均1時間42分。整形外科中央値1時間47分、平均1時間59分、内科中央値1時間47分、平均2時間1分、脳外科中央値1時間48分、平均1時間50分。診療科の滞在時間の短い消化器内科を基準にt検定を行った結果、診療科の滞在時間の差は認めなかった。
滞在時間の分布をみると、2時間以内に63%、2時間30分以内に83%であることが分かった。2時間30分をカットオフ値とし、2時間30分以内の群と2時間31分以上の群を比較すると、2科併診(P=0.0249)、MRI(P=0.0402)で有意差がみられた。
長時間滞在する原因として、検査結果が全てそろってから病状説明をしていることや、整形外科は外来兼務で救急対応しているため医師の診察待ちが発生していた。また、肺炎所見があり内科併診となることなど、数科併診の場合、一科が終了してから他科への依頼となることなどがあげられた。他、症状改善がみられず経過観察後入院や病棟の受け入れ準備が間に合わず待機の時間があることが分かった。
考察
 救急看護師はまだ診断されていない状況下で、速やかな医療の働きかけを必要としている患者へのケアを限られた時間の中で行っている。今回入院患者の救急室滞在時間を調査し、ばらつきはあるものの長時間の滞在となっていることが分かった。初療対応は複数看護師が関わるが、その後は他の救急患者をみながら看護師が2時間30分も対応している現状が明らかになった。
 今後不応需を減らし応需件数を増やすために現在の滞在時間を短縮することが必要である。そのためには、緊急検査以外は入院後に実施すること、併診や経過観察患者に対して看護師が調整役となり他職種、特に医師との連携強化を図ることが必要であると考えた。