第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護⑤

[OD105] 1.救急外来看護⑤

[OD105-02] 急性心筋梗塞で搬送された危機的状況にある患者に対する救急看護師の認識

○岸本 沙希1 (1. 聖泉大学看護学部)

Keywords:急性心筋梗塞、危機的状況、救急看護師、認識、看護実践

【目的】急性心筋梗塞の患者に対し救急看護師は、切迫する中で無意識に重要な看護実践を行っている。本研究では、急性心筋梗塞で搬送された患者の危機的状況下で救急看護師が認識している看護実践を明らかにする。【方法】研究デザイン:質的記述的研究。対象:A県の二次三次救急指定病院13病院の救急看護師。選定条件:救命救急センター・救急外来で現在勤務する救急経験5年〜10年の看護師。データ収集方法:半構造化面接。面接内容:急性心筋梗塞事例を提示し研究参加者が搬送直後から再灌流治療までの看護実践内容を、以下質問した。事例:「救急搬送された患者は60代の男性、苦痛様表情で胸痛を訴えている。意識は清明である。急性心筋梗塞と診断され、緊急カテーテル治療の説明の後、準備をすすめる。」①搬入直後から緊急カテーテル治療に向けて、あなたは何を考え、どのような看護をしますか。②急性心筋梗塞の患者の危機的状況に対して自分自身で心がけている事はどんなことですか。分析方法:Berelson.Bの方法論を参考に看護教育学における内容分析の手法を用いた。【倫理的配慮】所属施設の研究倫理審査委員会の承認(承認番号:020-001)を得て実施した。【結果】救急看護師10名、救急看護経験年数は5~10年(SD±2.0)、面接時間:平均40.2分(SD±6.19)、逐語録より276記録単位、43同一記録単位、13サブカテゴリ、6カテゴリを抽出した。急性心筋梗塞で搬送された危機的状況にある患者に対して救急看護師が認識している看護実践は【最優先は急性心筋梗塞の重症度の判断、急変予測・チームでの情報共有】【生命の危機的状況で前向きに安心して治療を受けられる援助】【死の恐怖や胸痛の軽減のためには自分に余裕を持ち患者の代弁者となること】【救急現場の倫理を考え最善のケアを模索すること】【家族と患者情報を共有しケアへの参加の提供】【個別性を見極めた急ぎつつも患者が納得いく説明】であった。【考察】救急看護師は、常に最悪な状況を予測して対応可能な準備を整えることが、患者の命を救う事に繋がる。そのためには救急現場での限られた情報を基に、重症度をアセスメントする総合的な判断力が求められる事、搬入後は1分1秒が患者の予後を左右するため医療チームで協働して早急にカテーテル治療につなげることが重要であると認識していたと考える。そして救急看護師に求められる実践力には看護の視点から患者の安全や安心を考え、救命や治療が優先される中でも、患者のそばを離れない事で患者が不安を表出し、心筋梗塞による死の恐怖を軽減させ、安心して治療が受けられる環境をつくる必要があると考える。そうすることで患者が落ち着き、患者が治療に前向きに望めることができ、結果として命を救う事に繋がるという認識が示唆される。またどうしても救命処置を優先せざるを得ない状況下で患者のプライバシーへの配慮や処置に伴う倫理的問題に対しての葛藤を抱えながら患者との関わりを持っていることが伺える。家族については、急性心筋梗塞でいつ急変するかわからないため、タイミングを図り患者との面会の時間を設けることで、患者状況を共有し、家族も治療に参加できるように整える必要があるという認識が考えられる。【結論】救命のためには、重症度のアセスメントや急変の予測をしながら患者の安全を考えたチーム医療が重要であること、患者に寄り添い不安を表出できるようなに安心できる環境をつくること、救命の中でも看護倫理を考えて最善のケアを模索しながら実践をし、患者・家族の意向を含めた援助をすることが重要であること、を認識していた。