第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護⑤

[OD105] 1.救急外来看護⑤

[OD105-03] 救命救急センターの救急外来における熟練看護師の原動力

○坂井 笑美1 (1. 旭川医大病院)

キーワード:救命救急センター、救急外来、熟練看護師、原動力

【目的】救命救急センターの看護師は、救急患者の生命を救う一方で、危機的な状況や死の場面に数多く遭遇しており、心的外傷となるような出来事にも直面している。このような状況の中、救命救急センターの救急外来で働く熟練看護師は、さまざまな困難を乗り越え、成長し、職務に適応していると考える。こうした熟練看護師が、日々高度な看護実践に取り組むためには、もととなる力やエネルギーとなる“原動力”が必要であるといえる。そこで、救命救急センターの救急外来における熟練看護師の体験の語りから、看護実践に取り組む熟練看護師の原動力を明らかにする。
【方法】質的記述的研究デザイン。研究対象者:日本救急医学会に登録されている北海道内の救命救急センターの救急外来で、看護実践経験が5年以上あり、ドクターカーやドクターヘリに乗務する、優れた臨床判断能力と卓越した看護実践能力がある看護師。またはそれと同等の能力があると職場の上司から推薦された看護師。データ収集方法:研究協力の承諾の得られた病院の救命救急センターの看護師長に、研究対象者の選定を依頼し、研究協力の同意の得られた研究参加者に面接を行った。データ分析:面接内容の逐語録をコード化し、抽象度を上げてサブカテゴリ化、カテゴリ化した。真実性の確保のため、逐語録の確認と分析結果のメンバーチェッキングを行った。分析の妥当性を高めるために、分析の全過程において質的研究者のスーパービジョンを受けた。
【倫理的配慮】研究の趣旨、参加の自由、個人情報の保護、データ管理方法、データ破棄方法などについて研究参加者へ文書と口頭で説明を行い、同意書の署名をもって承諾を得た。所属施設の倫理委員会の審査を受け、承認を得て実施した。
【結果】研究協力の承諾が得られた救命救急センター2施設、合計6名の熟練看護師より研究参加の同意を得た。研究参加者の年齢は30代から50代、看護師経験年数は10.9年から33.5年、救急看護師経験年数は6.6年から13.5年、救急外来経験年数は4.6年から13.5年であった。研究参加者が語った内容を分析した結果、214コード、51サブカテゴリが抽出され、【自分の理想である救急看護を提供するという自負】【救命救急センターの救急外来で培ってきた自分自身の実践力の確信】【救急の現場の進化を促す存在であるという自信】【人との関わりを通じて実感できる救急看護のやりがい】【救急外来で努力し成長してきた自分自身の受容】の5カテゴリが見出された。
【考察】救命救急センターの救急外来で働く熟練看護師は、配属されてから実践を続ける中で、【救急外来で努力し成長してきた自分自身の受容】という原動力を得ていた。そこから、より良い救急看護を提供できるよう、自らを研鑽できる【自分が理想とする救急看護を提供するという自負】や、自分自身の実践力への自信を積み重ねた【救命救急センターの救急外来で培ってきた自分自身の実践力の確信】という原動力につながっていた。さらに、さまざまな救急の現場で、高度な看護実践を維持、推進し発揮できる【救急の現場の進化を促す存在であるという自信】という原動力となっていた。これらの原動力は、周囲に対する感謝の気持ちや謙虚な姿勢、救急看護に対するポジティブな感情である【人との関わりを通じて実感できる救急看護のやりがい】という原動力にも影響していた。この5つの原動力は、全てが相互に影響し合い、原動力をさらに強化しながら、救命救急センターの救急外来における熟練看護師として、さらなる成長を促していると考える。