第23回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

オンデマンド配信講演

第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護⑤

[OD105] 1.救急外来看護⑤

[OD105-04] 救急外来看護師の小児患者への看護実践の認識・行動-検査・処置の心理的準備に焦点を当てて-

○比嘉門 強志1 (1. 淀川キリスト教病院)

Keywords:救急外来、小児救急、小児患者の権利

【はじめに】救急外来では命を守ることが優先されるなかで、小児患者の権利を尊重することは難しい。しかし、救急外来看護師(以下、看護師)の検査・処置を受ける小児患者への看護援助の認識や行動については明らかにされていない。
【目的】救急外来で検査・処置を受ける小児患者への心理的準備に対する看護援助を実践する看護師の認識と行動を明らかし、救急外来における小児患者の権利を尊重した看護援助に取り組むための看護師支援への示唆を得る。
【方法】研究デザイン:無記名自記式質問紙調査票を用いた量的記述的研究。
対象者:全国自治体協議会に登録され小児病棟と救急外来が併設している151施設のうち、協力が得られた40施設の救急外来で小児患者に看護実践をしている看護師とした。
調査方法:協力が得られた施設に質問紙を郵送し、無記名で個別郵送法にて回収した。
質問紙の概要:先行研究を参考に、看護師の検査・処置を受ける小児患者への看護援助の認識と行動について検査・処置の前7項目、中7項目、後5項目の計19項目と看護師自身や各施設の工夫に関する質問を作成した。
分析方法:質問項目ごとに記述統計を行い、関連をみるためSPSS. 23とEZR1.41にて統計処理を行った。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮】所属大学の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】40施設259名から回答を得た(回収率38.9%)。有効回答数は259名であった。参加者の属性は、年齢は40歳以上が140名(54.0%)、看護師の経験年数は11年目以上が195名(74.9%)、救急外来の経験年数は6年目以上が100名(38.6%)であった。自身に小児看護の経験がある者は71名(27.4%)、施設に小児救急看護認定看護師や小児看護専門看護師(以下、小児看護の専門家)がいる者は100名(38.6%)であった。1−4点で点数化した検査・処置前・中・後における認識の平均値(±SD)は、前3.43±.67、中3.58±.54、後3.71±.47で、行動の平均値は、前3.18±91、中3.32±.77、後3.58±.62であった。また、認識と行動の各19項目の中で、認識の1項目と行動の5項目以外では、約8割の者が必要性を認識し、行動していた。小児看護の専門家の有無と検査・処置における看護師の認識・行動との関連では、「小児患者へ自己紹介をすること」(p=.028)、「親が検査・処置に付き添うこと」(p=.015)の認識の2項目、また、「親の付き添いについて小児患者に確認をすること」(p=.018)、「親が検査・処置に付き添うこと」(p=.009)、「小児患者の希望を聞くこと」(p=.022)の行動の3項目において、小児看護の専門家が施設にいる者の方が、いない施設の者より有意に高くなっていた。
【考察】検査・処置における小児患者の権利を尊重した看護師の必要性の認識と行動は、検査・処置前の項目が低く、検査・処置中と後の項目が高くなっていた。これは、救急外来では、迅速に検査・処置を行うことが求められることから、検査・処置中と後に重点を置いていること、検査・処置前の小児患者に対する説明や関わり方への知識が不足していることが考えられる。また、施設内に小児看護の専門家がいることで、小児患者への権利を尊重した看護援助が実践しやすい環境になっていた。このことから、小児患者の発達段階やプレパレーションなど小児看護に関する知識や技術を学ぶ機会を作ったり、小児看護の専門家への相談体制や施設内に専門家を配置したりすることが有効であると考えられる。