[OD1101-02] 学校管理下における一次救命処置に対するA高校教職員の思いを知る
Keywords:教職員、一次救命処置
目的
日本スポーツ振興センターは、平成11年から平成20年まで、学校管理下の突然死を567件報告している。一方、現場近くにいた教職員が直ちに行った心肺蘇生法により、子どもが蘇生された事例が報告されており、教職員が一次救命処置(胸骨圧迫と自動体外式除細動器:以下AED)を実施できることの重要性が伺える。本研究は教職員の一次救命処置に対する思いを知ることで今後の一次救命処置指導の充実化への課題を見出すことを目的とする。
方法
A高校教職員に一次救命講習前にアンケートを依頼、一次救命講習後に回収。結果を分析し今後の課題を検討した。
倫理的配慮
本研究は、A病院倫理委員会の承認を得た。対象者に研究の趣旨、調査への協力は自由意志によるもので協力の有無で不利益は生じないこと、途中辞退の権利の保障、匿名性の厳守、個人のプライバシーの保護、データの管理および結果の公表について文書にて説明した。さらに、得られた調査内容は、本研究の目的以外には使用しないことを説明し同意を得た。なお、本研究において開示すべき利益相反関係にある企業はない。
結果
アンケートはA高校教職員72名に配布し回収率は45.8%。一次救命講習受講歴の質問に対し「ある」と回答した教職員は28名(84.8%)、「ない」と回答した職員は5名(15.2%)。「ある」と回答した教職員のうち、前回受講をしたのは、1~5年前が15名(53.6%)で最も多く、10年以上前が7名(25%)、5~10年前が1名(3.5%)で不明は5名(17.9%)。
学校内AED設置場所の質問に対し「設置場所を知っている」が29名(87.8%)「学校内に設置されていることは知っている」が4名(12.2%)。一次救命処置の必要な場面に遭遇し、実施したことがありますか?に対し「はい」と答えたのは1名。
自由記述で得られた教職員の思いをコード化し、カテゴリー化した。結果を表1に記す。
考察
学校内で、一次救命処置をする危機的場面は、稀な現象と考えられ不安、恐れ、放心に関わる≪畏怖≫のコードが多く抽出されると想定していた。しかし、≪生徒の命を守るために救命の知識と技術が必要≫という思いが≪畏怖≫を上回り、〔救命すべく最善を尽くしたい〕〔死なせない〕という強い思いが明らかとなった。教職員は突然死に対する教育指導がされており、責務と使命感から≪生徒の命を守るために救命の知識や技術が必要≫という思いを持っていると考えられた。
≪畏怖≫は、命を守れるか否かへの不安からでた思いであり、一次救命処置の内容を記載できている教職員でさえ、[学んではいるが実際に処置ができるのか不安]という思いを綴っていた。教職員にとって危機的場面に遭遇時の精神的負担や不安は大きいことが明らかとなった。
今回の結果から畏怖の中にも必死に助けたいという葛藤があることが分かる。その思いとは裏腹に前回の一次救命処置講習歴は、5年以上前、もしくは不明との回答が46.4%にも上り、実際に救命体験をしたことがあるという教職員も前回の一次救命講習歴は不明であった。加えてAEDが校内にあることを知りながらも、設置場所が分からないという教職員もおり、講習会を受講する機会がなかったことやAEDの設置場所の認識の不足があることが示唆された。
生徒の生命を守るためには、一次救命処置の知識・技術が必須であり、救命体験や救命講習の不足がより畏怖を助長している可能性が伺えた。私たちは、その不安を軽減させ救命活動に必要な知識・技術の向上を図る活動を継続する必要がある。教職員が一次救命講習を繰り返し学ぶ環境の支援が必要と考える。
日本スポーツ振興センターは、平成11年から平成20年まで、学校管理下の突然死を567件報告している。一方、現場近くにいた教職員が直ちに行った心肺蘇生法により、子どもが蘇生された事例が報告されており、教職員が一次救命処置(胸骨圧迫と自動体外式除細動器:以下AED)を実施できることの重要性が伺える。本研究は教職員の一次救命処置に対する思いを知ることで今後の一次救命処置指導の充実化への課題を見出すことを目的とする。
方法
A高校教職員に一次救命講習前にアンケートを依頼、一次救命講習後に回収。結果を分析し今後の課題を検討した。
倫理的配慮
本研究は、A病院倫理委員会の承認を得た。対象者に研究の趣旨、調査への協力は自由意志によるもので協力の有無で不利益は生じないこと、途中辞退の権利の保障、匿名性の厳守、個人のプライバシーの保護、データの管理および結果の公表について文書にて説明した。さらに、得られた調査内容は、本研究の目的以外には使用しないことを説明し同意を得た。なお、本研究において開示すべき利益相反関係にある企業はない。
結果
アンケートはA高校教職員72名に配布し回収率は45.8%。一次救命講習受講歴の質問に対し「ある」と回答した教職員は28名(84.8%)、「ない」と回答した職員は5名(15.2%)。「ある」と回答した教職員のうち、前回受講をしたのは、1~5年前が15名(53.6%)で最も多く、10年以上前が7名(25%)、5~10年前が1名(3.5%)で不明は5名(17.9%)。
学校内AED設置場所の質問に対し「設置場所を知っている」が29名(87.8%)「学校内に設置されていることは知っている」が4名(12.2%)。一次救命処置の必要な場面に遭遇し、実施したことがありますか?に対し「はい」と答えたのは1名。
自由記述で得られた教職員の思いをコード化し、カテゴリー化した。結果を表1に記す。
考察
学校内で、一次救命処置をする危機的場面は、稀な現象と考えられ不安、恐れ、放心に関わる≪畏怖≫のコードが多く抽出されると想定していた。しかし、≪生徒の命を守るために救命の知識と技術が必要≫という思いが≪畏怖≫を上回り、〔救命すべく最善を尽くしたい〕〔死なせない〕という強い思いが明らかとなった。教職員は突然死に対する教育指導がされており、責務と使命感から≪生徒の命を守るために救命の知識や技術が必要≫という思いを持っていると考えられた。
≪畏怖≫は、命を守れるか否かへの不安からでた思いであり、一次救命処置の内容を記載できている教職員でさえ、[学んではいるが実際に処置ができるのか不安]という思いを綴っていた。教職員にとって危機的場面に遭遇時の精神的負担や不安は大きいことが明らかとなった。
今回の結果から畏怖の中にも必死に助けたいという葛藤があることが分かる。その思いとは裏腹に前回の一次救命処置講習歴は、5年以上前、もしくは不明との回答が46.4%にも上り、実際に救命体験をしたことがあるという教職員も前回の一次救命講習歴は不明であった。加えてAEDが校内にあることを知りながらも、設置場所が分からないという教職員もおり、講習会を受講する機会がなかったことやAEDの設置場所の認識の不足があることが示唆された。
生徒の生命を守るためには、一次救命処置の知識・技術が必須であり、救命体験や救命講習の不足がより畏怖を助長している可能性が伺えた。私たちは、その不安を軽減させ救命活動に必要な知識・技術の向上を図る活動を継続する必要がある。教職員が一次救命講習を繰り返し学ぶ環境の支援が必要と考える。