第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 11.その他①(地域連携)

[OD1101] 11.その他①(地域連携)

[OD1101-04] クリティカルケア領域に従事する看護師の倫理的感受性および倫理的行動の実態調査

○黒河 俊伸1、嶋岡 征宏1、相楽 章江1、阿部 朋美1、藤田 優子1 (1. 山口大学医学部附属病院先進救急医療センター)

Keywords:クリティカルケア領域、看護の倫理観、実態調査

Ⅰ.目的
クリティカルケア領域に勤務する看護師の倫理的感受性および倫理的行動の実態を明らかにする。

Ⅱ.方法
1.研究対象者
A病院の救命センターおよびICUの看護師103名(看護師長は除く)を対象とした。
2.調査期間
2021年1月14日~2021年2月28日
3.調査方法
倫理的感受性尺度および倫理的行動尺度改訂版を用いて質問紙調査を実施した。
調査内容は年代、性別、基礎教育、資格の有無、看護師経験年数、クリティカルケア領域の経験年数、倫理研修の受講経験、受講した倫理研修の種別、倫理カンファレンスで事例提供者になった経験、クリニカルラダーの取得状況である。また、倫理的感受性尺度19項目、倫理的行動尺度改訂版15項目を尋ねた。
4.分析方法
各基本属性の種別による各尺度の合計値の比較、各尺度における各下位尺度の平均値の比較を行うために、t検定、一元配置分散分析を行った。また、倫理的感受性尺度と倫理的行動尺度に関係を明らかにするため、Spearmanの順位相関係数を算出した。統計解析には、SPSS ver.19を用いた(P<0.05を有意水準とした)。
5.倫理的配慮
本研究は、A病院の倫理審査委員会の承認を得て実施した。

Ⅲ.結果
103部の質問紙を配布し、回収は81部であり、回答の不備を除いた79部を分析の対象とした。年代は、20歳代が44.3%、30歳代が46.8%であった。性別は、女性が81.1%であった。クリティカルケア領域の経験年数は、1年未満~3年目が36.7%、4~6年目が31.6%、7~9年目が20.2%であった。
倫理的感受性尺度の合計点と各基本属性で、t検定、一元配置分散分析を行った結果、有意差はなかった。また、「尊厳の意識」、「専門職としての責務」、「患者への忠誠」の3群の下位尺度の平均値を比較すると、「尊厳の意識」は2.85、「専門職としての責務」は4.01で有意差があった(p<0.05)。
倫理的行動尺度の合計点と各基本属性で、t検定、一元配置分散分析を行った結果、有意差はなかった。また、「リスク回避」、「善いケア」、「公正なケア」の3群の下位尺度の平均値を比較すると、「リスク回避」は4.58、「公正なケア」は3.74で有意差があった(p<0.05)。
倫理的感受性尺度と倫理的行動尺度の合計点の相関係数は、r=.391(p<0.05)であった。

Ⅳ.考察
A病院救命センターおよびICU では、倫理的問題に直面することが多く、日々倫理カンファンスを行い、多くのスタッフとディスカッションし、対応している。各基本属性と各尺度の合計点に差がないことは、カンファレンスにより、倫理的問題の解決だけでなく、個々の倫理観を養うことに繋がっていると考える。
クリティカルケア領域の患者の多くは、生命の危機的状況にあり、デバイス類の計画外抜去や転倒転落は患者の治療過程に影響を与える。そのため、患者の「尊厳の意識」を考えてはいるが、計画外抜去や転倒転落の危険性から患者を守るために「リスク回避」を優先せざる負えない場合がある。そのような状況を日常的に経験した結果、「リスク回避」の意識が高くなり、患者の安全を守る「リスク回避」を重視した回答が多くなったと考える。「尊厳の意識」の項目に関して、実際には倫理的問題に直面している患者の尊厳を守るために、カンファレンスを定期的に行い、解決に向け検討している。ここには看護師が抱えるジレンマが隠されている可能性があるが、質問紙の結果だけでは推測の域を出ない。そのため、質的な調査や単施設だけでなく、多施設における検証も必要であると考える。