第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 11.その他①(地域連携)

[OD1101] 11.その他①(地域連携)

[OD1101-05] 救命救急センターICUにおける自動運動リハビリの効果の検討

○白上 哲平1、内藤 綾1、江口 秀子2 (1. 済生会千里病院、2. 鈴鹿医療科学大学)

キーワード:ICU、自動運動、早期リハビリテーション、離床

【研究目的】
ICUにおける早期からのベッドサイドでのリハビリテーションや離床は、集中治療後症候群のリスクや様々な合併症を低減する可能性があると言われている。しかし、患者自身に等張性、等尺性収縮運動を利用した筋力増強運動をしてもらう自動運動リハビリテーション(以下、自動運動リハビリ)の効果に関する研究は見当たらない。本研究の目的は救命救急センターICUにおける自動運動リハビリの効果の検討と、より安全な実施方法を検討することである。

【研究方法】
研究デザインは複数事例研究とし、自動運動リハビリを実施した群(以下、介入群)と自動運動リハビリを実施していない群(以下、非介入群)をそれぞれ5事例ずつ選定、カルテから後ろ向きにデータを収集し、自動運動リハビリの効果について2群間で比較検討を行った。また、介入群の中で効果を発揮できたと考えられる1事例、中止基準を満たした1事例から、介入による効果や影響を検討した。

【倫理的配慮】
データ収集はA病院の取り決めに従い、個人情報収集・取扱届出書を施設長に提出し、許可を得た後に実施した。データは、個人が特定されないように匿名化し、プライバシーの保護に努めた。

【結果】
全事例が緊急入院であり、外傷、呼吸器疾患や循環器疾患の急性増悪などの理由でICUに入室し、持続鎮静下で侵襲的人工呼吸器管理を実施されていた。介入群における年齢の範囲は42~76歳、平均ICU在室日数は10.4日間だった。非介入群における年齢の範囲は52~83歳、平均ICU在室日数は11.4日間だった。介入群では安静度制限がベッド上の時期から実施できる低負荷の運動として、手指の掌握運動、上肢の挙上運動、足関節の底背屈運動などを選択し、患者自身に実施を促していた。低負荷の運動を安全に実施できたら、少し負荷を強めた抵抗運動を実施していた。安静度制限が歩行開始可能となってから、実際に歩行するまでの期間は介入群では中央値0.5日間、非介入群では2日間であり、2群間の中央値の差は1.5日間であった。侵襲的人工呼吸器管理期間や鎮静剤の持続投与終了から意思疎通が可能になるまでの期間の比較検討では明らかな差はなかった。
自動運動リハビリの効果を発揮できたと考えられる事例では、鎮静深度を調整し日中の自動運動リハビリを連日実施していた。胃穿孔の治療のため、開腹術後で腹部開放管理中であり、ギャッジアップは30度まで、腹筋を使用する運動は禁止など、厳しい運動制限があったが、実施可能な足関節の底背屈運動などを連日実施していた。ベッド上の安静度制限が22日間あったが、歩行開始可能と指示が出た翌日に歩行できた。また、AMIによる難治性VFをみとめた事例では、V-A ECMO、IABP挿入中から可能な上肢や足関節運動などを実施していた。患者は、清潔ケアを受ける際の刺激等で一過性の心房細動が出現することがあった。自動運動リハビリ実施時の労作に伴い血圧上昇や不整脈、呼吸促拍が生じた際は、中止基準に沿ってリハビリを中止、安静にすることで5分以内に状態は改善し、倦怠感や疲労感などの自覚症状の改善を認めた。

【考察】
自動運動リハビリの介入は、歩行時に使用される筋群(腓腹筋や前脛骨筋など)の廃用性変化を予防でき、安静度制限が歩行可能となってから歩行開始までの期間を短縮した可能性があると考えられる。また、自動運動リハビリ中に中止基準に該当した事例の分析から、不整脈の出現やバイタルサインの変動に先行して倦怠感や疲労感などの自覚症状が生じることもあり、中止基準には客観的情報に加え患者の主観的情報の指標を検討する必要性が示唆された。