第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 11.その他③

[OD1103] 11.その他③

[OD1103-05] 高齢者施設における事前指示書の課題と看護職員の活用実態ー高齢者施設で働く看護職員の役割ー

○桐野 郁子1 (1. 帝京大学 福岡医療技術学科)

Keywords:高齢者施設、事前指示書、看護の認識

1.はじめに
 2020年総務省統計局では「総人口が減少する中で、高齢者人口は3617万人と過去最多」と述べている。厚生労働省の2035年を見据えた保健医療政策ビジョンでは、その人にあった医療効果を提供、高齢者が尊厳を保ちながら暮らし続けることができる社会を目指している。
 高齢者が住み慣れた地域で、人生の最期まで自分らしい生活を送れるよう、高齢者の意思を尊重する関わりとして、アドバンス・ディレクティブ(Advance Directive:AD 事前指示書以下「AD」という)の存在がある。これは、自らが判断を失った際に自分に行われる医療行為に対して、意向を前もって意思表示するための文章である。
高齢者は、身体機能及び認知の低下により自力での生活は難しく自宅での介護が困難となった際に、他者からの支援が必要となるなかの一つ特別養護老人ホーム(以下、「特養」とする)は終の住処としての役割が期待されている。そこに入居している高齢者のADの実態および活用と看護職の関りについて研究を行った。
2.目的
 特養でのADの活用の実態、そこに勤務する看護職のADに関わりからADの活用に向けた課題を抽出し検討すること。
3.方法
 A県内の特別養護老人ホーム378施設にADの活用有無を確認したうえで6名の看護職員の協力が得られた。現象を理解するのに適した半構造化面接による質的記述研究法を用いた。研究期間は2020年4月1日から8月31日、協力者2名はZOOMでのオンライン、4名は対面にて実施した。内容は、研究参加者の基本属性、施設の概要、ADの活用・管理について約60分程度とした。インタビューで得られた録音及びデータから逐語録を作成し、記述データとした。各コードを比較検討し、類似した意味を持つものをまとめ表題を付けサブカテゴリーとした。データ分析の信頼性を高めるために全分析課程の段階において、内容の妥当性と信頼性を確保するために質的研究の教員2名によりスーパーバイズを受け実施した。
4.倫理的配慮
 本研究は学校法人帝京大学福岡キャンパス倫理審査委員会での承認を得て、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則および研究に関する倫理的指針に従い、本計画書を遵守して実施した。
5.結果
 調査依頼書の回収状況は97施設(25.7%)であった。97施設のなかでADを活用している施設は38施設(39.2%)、活用していな施設は51施設(52.6%)、未記入8施設(8.2%)であった。ADを活用している38施設のなかで、協力できる施設は10施設で6名の看護職にインタビューした。結果、逐語録から関係する文節563より、190のコード、44のサブカテゴリー、20のカテゴリーを生成した。生成されたカテゴリーは、1.特養におけるADの現状、2.本人と家族の現状(意向確認)3.ADの活用と課題、4.看護師としての役割から構成されデータが飽和化されていることを確認した。
6.考察
 本研究は特養に職務する看護職に対して、ADの活用からデータを分析したものである。この研究の結果から認知症と看取りと介護度の高い施設で職務する看護職が、入居者及び家族から得たADを施設内や連携病院で活用するための関りがある。また、今後ADを効力ある入居者の意思表示として活用するための課題が考えられる。研究結果を踏まえてADに対して1)AD作成に対して入居時に関わる際の施設の現状と課題2)効力のある書類にするための課題3)入居時から入居中にかけて関わる入居者と、その家族の現状4)ADに関する施設職員への教育と連携病院との繋がり、今後も増加する高齢者が望む生活に対して看護職の関りが示唆された。