第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 5.重症患者看護③

[OD13] 5.重症患者看護③

[OD13-01] チューブ類の自己抜去に対するICDSC導入後の効果

○北村 智1、中島 明子1、大野 彩霞1、木下 翔太1 (1. 埼玉医科大学総合医療センター)

Keywords:ICDSC

【目的】
A病院救命HCU病棟(以下救命HCU)は、埼玉県における外傷患者の多くを収容しており集中治療室を経て救命HCUに入室する。患者は、高齢者、精神疾患を基礎疾患に有する方、侵襲の大きい手術を経た患者が多く、せん妄を誘発する因子が多く存在する。せん妄による患者への悪影響は、外傷やチューブ類の自己抜去などが挙げられる。とりわけチューブ類の自己抜去は救命HCUでも2番目に多いインシデントで、他施設でも同様の傾向が見られる。Intensive care delirium screening checklist(以下ICDSC)はせん妄のモニタリングツールとしてPADガイドラインでも推奨されている。救命HCUでは2020年8月1日よりICDSCを導入し各勤務帯で評価し、4点以上の患者をせん妄と判断し看護介入を行なった。我々は客観的な評価ツールを用いることで導入前よりも適切な看護介入が行われ、自己抜去のインシデントは減るという仮説を立てた。ICDSCを用いた看護介入がチューブ類の自己抜去に与える影響を報告した研究はない。ICDSC導入前と導入後で自己抜去件数を比較し、ICDSCの評価をする事とチューブ類の自己抜去との関連について検討したので報告する。
【方法】
単施設後方視的観察研究。2020年5月1日~10月31日までの6ヶ月間に救命HCUに入院した372人のうち、経管栄養チューブ、末梢静脈路、中心静脈路、創部陰圧ドレーン、胸腔ドレーン、膀胱留置カテーテル、挿管チューブのいずれかを留置していた患者303人を対象とした。ICDSC導入前の自己抜去群(E群)21人、ICDSC導入後自己抜去群(L群)16人に分けて比較を行った。各群の年齢、性別、Glasgow Coma Scale(GCS)、入院の原因となった疾病、精神疾患の有無、自己抜去時点での入院日数、ICDSCの判定結果(L群のみ)、抜去されたデバイスを観察・評価した。各群についての比較はマン・ホイットニーのU検定、カイ二乗検定を用いた。
【倫理的配慮】
本研究は、患者の診療録をもとに分析を行う後方視的研究であり、患者の診療等に影響を及ぼすことはない。個人情報はすべて匿名化し、個人情報が外部に漏れることはない。また、本研究はA病院の倫理審査委員会の承認を得ている。またオプトアウトでの同意を得ている。
【結果】
E群とL群の間に救命HCUに入院していたデバイス留置されていた患者はそれぞれ143人と160人であった。E群とL群の自己抜去率は14.7%vs9.9%(p値:0.214, 95%CI)で低下したが有意差はなかった。E群とL群で有意差があったのは精神疾患の有無の割合(p値:0.096, 95%CI)と入院の契機となった疾病の割合(頭部外傷)であった(p値:0.065,95%CI)。L群において精神疾患を有する患者は2人(E群は0人)で、頭部外傷の患者は5人(E群は13人)であった。
【考察】
本研究における比較された各群は、ほぼ同等の集団である。しかし自己抜去に影響を及ぼすと推測されるような精神疾患、頭部外傷の割合に差があったことは交絡因子を調整できていないため、結果の正確性に影響を与えている可能性がある。ただし、本来ならば精神疾患、頭部外傷を有すれば自己抜去の割合は増えると予想されたが本研究では逆の関係になっていた。ICDSCを評価するということ自体が介入であり、盲検化されていないため、検者バイアスにより自己抜去の絶対数が減った可能性はある。本研究では単変量解析であり項目毎の相互関係について多変量解析を行っていないので症例数を蓄積し多変量解析を行うことが課題である。