第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 5.重症患者看護③

[OD13] 5.重症患者看護③

[OD13-04] 集中治療室の患者特性を考慮した人工呼吸器離脱プロトコルの作成

○井頭 健一1、宮本 遼1、中沢 誠1、高 直輝1、井川 洋子1、上澤 弘美1 (1. 総合病院土浦協同病院)

Keywords:離脱プロトコル

【背景】
A病院救急集中治療室(以下、EICU)では、人工呼吸期間短縮を目的に「覚醒トライアル(SAT)」、「自発換気トライアル(SBT)」を実施している。しかし、看護師によってSATでの覚醒時間、SBTでの人工呼吸器設定変更後の評価時間に差異があることが課題であった。そのため、看護師が人工呼吸器離脱に向けたSATやSBTを標準的に実施できるよう、人工呼吸器離脱プロトコル(以下、離脱プロトコル)を作成したので報告する。
【目的】
 EICUにおける人工呼吸器離脱に関する課題解決に向け離脱プロトコルを作成する。
【倫理的配慮】
 離脱プロトコルは診療プロトコルに該当するため、A病院の医療安全管理員会にプロトコル作成について承諾を得たのち、臨床倫理委員会の承認を得た(承認番号:2021CE001)。
【方法】
1.離脱プロトコル作成メンバー選出
 プロトコル作成メンバーは、EICU看護師の中から、3学会合同呼吸療法認定士の資格を有する看護師1名、経験年数3~8年目の看護師3名の構成とした。
2.離脱プロトコル原案作成
日本クリティカルケア学会、日本集中治療医学会、日本呼吸療法医学会の3学会により作成されたプロトコル(3学会合同プロトコル)とAgency for Healthcare Research and Quality(AHRQ)のプロトコルに示されているSAT・SBT開始基準と成功基準など、離脱プロトコルに必要な項目および内容についてメンバーと共に検討し原案を作成した。
3.原案を基に医師との検討
救急科医師と検討の際に、EICU入室患者の背景情報を共有した。2019年度のEICU患者背景は、入室患者902名中27%に当たる245名が人工呼吸患者であった。人工呼吸患者を疾患別の割合では、消化器外科、脳外科、心臓血管外科の術後などの外科系患者が(46%)で最多であった。人工呼吸期間が長くなる傾向がある疾患として、心肺停止後患者(11%)、敗血症患者(2%)が挙げられた。この背景を基に、救急科医師と共にSAT、SBTの基準を検討した。
人工呼吸患者では、外科系の手術後患者や敗血症患者の発熱症状が多く認められる。そのため、SBT中止基準の「発熱」に該当してしまうことで離脱プロコトルの進行への影響を考慮しSBT中止基準から除外した。また、心肺蘇生後患者は、持続鎮静下で平熱療法が行われる。平熱療法は、発熱による代謝亢進を抑制することを目的に深鎮静での全身管理となるため、SATの進行は患者への不利益となる。そのため、人工呼吸器患者のSAT適応の判断材料として心肺蘇生後の平熱療法患者を中止基準として追加した。
【考察】
 病棟特性に沿ったプロトコルは、ケアの標準化に繋がりSAT、SBTの際に統一された介入が可能となると考える。そのため、今後は離脱プロトコルの使用状況や人工呼吸期間や抜管成功率などのアウトカムを評価していく必要がある。また、Girardらは、医師以外の他職種による訓練された専門チームが、人工呼吸離脱に参画しプロトコルに則って離脱を進めれば人工呼吸期間が短縮する(Girard et al,2008)と述べている。このことから、離脱プロトコルを看護師以外の職種と共に実践していくことは重要であり、離脱プロトコルを多職種と共有できるよう働きかけていくことが課題である。