[OD301-02] 救急部門でのEmergency Severity Index導入効果の検証:前後比較研究
Keywords:緊急度判定、救急外来、院内トリアージ
【目的】救急部門では、受診患者の重症化や急変を予防するために、緊急度に応じて診察の優先順位を判断する院内トリアージ(緊急度判定)が重要視されている。本研究の目的は,この判定を補助する緊急度判定支援システム(トリアージツール)の一つであるEmergency Severity Index(ESI)を救急部門に導入し、この効果および有用性を検証することである。
【方法】本研究は教育介入前後比較研究で実施した。A病院は病床数268床の救急診療を受け入れている地域の中核病院であり、1日約540人程度の患者が外来を利用している。A病院はこれまで統一した緊急度判定を導入しておらず、各看護師の判断で優先順位を判断している。本研究の対象は、研究同意の得られたA病院の救急外来でトリアージ業務に従事する救急看護師11名とした。具体的な介入内容は、まず、ESIハンドブックを参考にした教育介入の前後に緊急度判定確認テストを受講してもらい、その判定精度の差を検証した。教育介入はESIハンドブックを参考にした講義と緊急度判定場面の動画視聴を組み合わせた全5時間のプログラムとし、緊急度判定確認テストは全30問で構成された。緊急度判定精度の検証は,評価者間一致の指標であるκ係数を用いて判定した。また,両群のオーバートリアージ(OT)およびアンダートリアージ(UT)を算出し,両群をPearsonのカイ二乗検定で分析した。さらに,課題開始から終了までの判定時間,トリアージツールの使い易さをVisual Analog Scale(VAS)で評価した。倫理的配慮としては、B大学倫理審査委員会の承認の上、A病院長ならびに所属長の許可を得た。また、研究対象者には研究参加により不利益がないことを口頭と書面で説明し同意を得て実施した。
【結果・考察】研究対象者として11名のトリアージナースが参加した。介入前後での評価者間一致は,介入前 = 0.26(Fair),介入後 = 0.46(Moderate)であり,全体的な評価者間一致の上昇を認めた。次に,各緊急度別の評価者間一致において,レベルⅠ(介入前 = 0.47,介入後 = 0.50),レベルⅡ(介入前 = 0.19,介入後 = 0.39),レベルⅢ(介入前 = 0.20,介入後 = 0.42)、レベルⅣ(介入前 = 0.20,介入後 = 0.41),レベルⅤ(介入前 = 0.38,介入後 = 0.67)であり,レベルⅡからⅤで一致率の上昇を認めた。さらに,UTは介入前 = 22.1%,介入後 = 11.2%,OTは介入前 = 34.8%,介入後 = 20.9%であり,両群間に有意な差があった(p < 0.01)。すなわち,ESIによる緊急度判定は,全体的な緊急度判定精度の上昇ならびに緊急を要する患者群への判定精度が高いこと,およびUTやOTに減少によって,隠れた緊急患者の病状悪化の防止,重症患者の待機時間減少に貢献することが示唆された。一方,VAS,判定時間は有意差を認めなかった。
【結語】救急部門へのESIを用いた緊急度判定の導入は、緊急度判定精度の上昇を認め,特に判定に難渋する緊急度の高い患者への臨床判断に有効であることが明らかになった。
【方法】本研究は教育介入前後比較研究で実施した。A病院は病床数268床の救急診療を受け入れている地域の中核病院であり、1日約540人程度の患者が外来を利用している。A病院はこれまで統一した緊急度判定を導入しておらず、各看護師の判断で優先順位を判断している。本研究の対象は、研究同意の得られたA病院の救急外来でトリアージ業務に従事する救急看護師11名とした。具体的な介入内容は、まず、ESIハンドブックを参考にした教育介入の前後に緊急度判定確認テストを受講してもらい、その判定精度の差を検証した。教育介入はESIハンドブックを参考にした講義と緊急度判定場面の動画視聴を組み合わせた全5時間のプログラムとし、緊急度判定確認テストは全30問で構成された。緊急度判定精度の検証は,評価者間一致の指標であるκ係数を用いて判定した。また,両群のオーバートリアージ(OT)およびアンダートリアージ(UT)を算出し,両群をPearsonのカイ二乗検定で分析した。さらに,課題開始から終了までの判定時間,トリアージツールの使い易さをVisual Analog Scale(VAS)で評価した。倫理的配慮としては、B大学倫理審査委員会の承認の上、A病院長ならびに所属長の許可を得た。また、研究対象者には研究参加により不利益がないことを口頭と書面で説明し同意を得て実施した。
【結果・考察】研究対象者として11名のトリアージナースが参加した。介入前後での評価者間一致は,介入前 = 0.26(Fair),介入後 = 0.46(Moderate)であり,全体的な評価者間一致の上昇を認めた。次に,各緊急度別の評価者間一致において,レベルⅠ(介入前 = 0.47,介入後 = 0.50),レベルⅡ(介入前 = 0.19,介入後 = 0.39),レベルⅢ(介入前 = 0.20,介入後 = 0.42)、レベルⅣ(介入前 = 0.20,介入後 = 0.41),レベルⅤ(介入前 = 0.38,介入後 = 0.67)であり,レベルⅡからⅤで一致率の上昇を認めた。さらに,UTは介入前 = 22.1%,介入後 = 11.2%,OTは介入前 = 34.8%,介入後 = 20.9%であり,両群間に有意な差があった(p < 0.01)。すなわち,ESIによる緊急度判定は,全体的な緊急度判定精度の上昇ならびに緊急を要する患者群への判定精度が高いこと,およびUTやOTに減少によって,隠れた緊急患者の病状悪化の防止,重症患者の待機時間減少に貢献することが示唆された。一方,VAS,判定時間は有意差を認めなかった。
【結語】救急部門へのESIを用いた緊急度判定の導入は、緊急度判定精度の上昇を認め,特に判定に難渋する緊急度の高い患者への臨床判断に有効であることが明らかになった。