第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 3.トリアージ②

[OD302] 3.トリアージ②

[OD302-01] 院内トリアージの質向上を目指したトリアージポスター作成とその効果

○増田 彩奈1、藤崎 隆志1 (1. 小倉記念病院)

Keywords:トリアージ

【はじめに】
A病院では2012年よりJTAS緊急度判定システムを用いて、院内トリアージを実施している。2018年はトリアージ対象患者3770名に対してトリアージ件数376件(21%)、2019年はトリアージ対象患者3602名に対しトリアージ件数222件(9%)と低下がみられた。トリアージ件数減少の要因の一つとしてトリアージナース別のトリアージ実施率件数のバラつきがみられた。そのため、院内トリアージ実施率向上を目的に月別トリアージポスター作成・掲示を行った結果、院内トリアージの実施率などの向上につながったので、ここに報告する。

【目的】
トリアージポスター掲示前後の院内トリアージの効果を検証する。

【方法】
1.ポスター作成・掲示
2018年度と2019年度の院内トリアージ分析から院内トリアージチームにてトリアージポスター内容を検討し、トリアージ対象患者数、トリアージシート記入数、JTASレベル記入数、前月比、トリアージ実施看護師ランキング、トリアージに関する豆知識についての内容掲載を行った。
ポスター掲示は2020年1月から1か月毎にポスター作成を行い、救急看護認定看護師にレビューを受けた後、修正等を行ない休憩室に掲示した。
2.調査対象・データ集計
調査対象は2019年1月~12月 2020年1月~12月までの院内トリアージ対象患者数11,441名。
データは2019年度と2020年度の院内トリアージ対象患者と院内トリアージ実施・未実施件数、救急外来トリアージ表からトリアージナース別のトリアージ件数、トリアージ時間、トリアージ判定結果、オーバー・アンダートリアージ件数を集計し比較検討した。

【倫理的配慮】
A病院看護部倫理委員会の承認を得た。データは匿名化し個人が特定できないように配慮。研究参加の有無によって不利益は生じない。

【結果】
2019年トリアージ対象患者3602名に対しトリアージ件数301件(トリアージ率12%)
2020年トリアージ対象患者2911名に対しトリアージ件数253件(トリアージ率16%)
受付からトリアージ完了時間2019年、2020年ともに平均12分
アンダートリアージ2019年16件(1%)2020年18件(1%)オーバートリアージ2019年6件(0%)2020年11件(1%)
2020年の月別トリアージ実施率1月2月8%に対し3月~12月の平均19%

【考察】
ポスターに毎月のトリアージ実施数や前月比、トリアージ実施数上位3名をランキング形式で記載したことが、意識向上に繋がりトリアージ実施率上昇に効果があったのではないかと考える。月別トリアージ率をみると1月2月は8%に対し3月~12月は平均19%に上昇した。毎月のトリアージデータの分析・ポスター作成・掲載を出来る限り早期に行い、トリアージナースへ迅速なフィードバックができたことが、早期実施率向上に繋がったのではないかと考える。
受付からトリアージ完了時間の平均は12分であり、緊急度判定で迷いやすい症例を豆知識として掲載したことで、トリアージ現場での迷いが軽減できた可能性があり、JTASの成人トリアージプロセスに準じた行動ができているといえる。
アンダー・オーバートリアージはポスター掲示前後で発生率に差はみられなかった。トリアージナースが熟練を重ねていること、発生しやすい症例をポスター内容に取り入れたことが、トリアージの正確性確保に繋がったのではないかと考える。

【結論】
トリアージポスターは院内トリアージ実施率向上、トリアージの正確性確保に繋がった。
ポスターの評価だけでは限界があり、今後は様々な視点で院内トリアージの検証を行うことが必要である。