第23回日本救急看護学会学術集会

講演情報

オンデマンド配信講演

第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 3.トリアージ②

[OD302] 3.トリアージ②

[OD302-02] COVID-19感染管理におけるトリアージ看護師の役割

○堀川 梓1、大軒 理恵1 (1. 医療法人沖縄徳洲会湘南鎌倉総合病院救命救急センター)

キーワード:院内トリアージ、JTAS、感染管理、COVID-19

Ⅰ.はじめに
 新型コロナウイルス(COVID-19)流行後、当院は2020年4月に院外に発熱外来を設置した。当院救急外来では、受診患者全てに対しJTAS(Japan Triage and Acuity Scale)を用いて看護師が院内トリアージを行い、感染が疑われる患者の待合隔離を行うことで、院内における水平感染予防を含めた感染管理の役割も担っている。

Ⅱ.目的
 トリアージ看護師が院内トリアージを行うことで、COVID-19陽性者の隔離が適切にできていたか、緊急度の高い患者への診察・治療の早期介入が実施できていたか検証する。

Ⅲ.方法
1.研究デザイン
本研究は単施設後方視的観察研究である
2.施設の背景
 新型コロナウイルス流行後、ERの感染対策として、トリアージブースへアクリル板設置、ER初療室へHEPAフィルター設置し陰圧環境を整備した。ER待合エリアは感染が疑われる患者とその他受診患者でイスの色分け行い、患者案内をした。また、発熱外来案内のフローチャートを作成(表)し、フローに沿って発熱外来・ERエリアへ患者案内を行った。COVID-19流行状況を考慮し、隔離エリアを適宜拡充し運用ルール・フローチャートを5回改訂した。
 当院の発熱外来の特性として本院とは離れた別棟であり、ソーシャルディスタンスが保てている、車いす・ストレッチャー患者の搬入が困難である、検査や処置などに制限があるなどが挙げられる。
3.調査対象者
2020年4月~2021年3月までの救急外来受診者のうちCOVID-19陽性者数を対象とした。
4.調査期間
2020年4月1日~2021年3月31日
5.倫理的配慮および利益相反
 本調査で作成したデータベースに含まれる情報は匿名化しており、公表にあたっては数値化し個人が特定されないよう配慮した。本稿のすべての著者に規定された利益相反はない。
6.研究方法
 研究対象者の緊急度判定・診察場所・案内理由をカルテレビューで特定した。トリアージ終了した時間~診察開始時間に要した時間の平均を調査した。

Ⅳ.結果
 調査期間中に当院を受診した患者のうちCOVID-19陽性者は622名だった。ER隔離エリアに案内したのは53名(8.5%)、ER待合へ案内したのは39名(6.3%)だった。ER待合へ案内した患者の内訳は、緊急度レベル3は29名、緊急度レベル4は10名であった。緊急度レベル4の患者は車椅子患者が5名、その他5名は発熱外来案内ルール以外の主訴であった。
 トリアージ後の診察開始時間は緊急度レベル1・2に関してはトリアージ場所から移動しER初療室入室後ただちに診察を開始していたため、平均値2分となっている。緊急度レベル3は平均値11分、緊急度レベル4は平均値23分となっていた。

Ⅴ.考察
 ER待合に案内した患者以外、全てのCOVID-19陽性者を発熱外来・ER隔離エリアへ案内できており、トリアージ看護師が感染管理の面でも役割を果たしていたと考える。また、COVID-19流行状況を考慮しその都度フローチャートを改訂しフレキシブルに対応できていたため、COVID-19陽性者の隔離を行えていたと考える。
 緊急度レベル3はER待合への案内になり充分な隔離状況ではなかったが、緊急度判定別の診察開始時間を比較してみても、緊急度が高い患者の診察時間は短く早期に診察・治療介入が行えていた。

Ⅵ.結論
 トリアージ看護師は感染管理・緊急度判定を両立し患者に適切な医療を提供できていた。感染状況に合わせフローチャートの改訂を実施しフレキシブルに対応し感染管理を行っていく必要がある。感染症に対しての知識もトリアージ看護師育成に重要となる。
OD302-02.jpg