第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 3.トリアージ②

[OD302] 3.トリアージ②

[OD302-03] A病院救急外来における緊急度判定に伴う困難因子の抽出

○松田 浩樹1 (1. 東京ベイ・浦安市川医療センター)

Keywords:緊急度判定、スタッフ教育

【はじめに】
A病院ではトリアージナースが専従せず、看護師や医師、救急救命士が連携し緊急度判定を行っている。しかし、A病院のスタッフが緊急度判定時に抱く困難について、調査・言及するには至っていない。A病院における緊急度判定に伴う困難因子を明らかにすることは、緊急度判定の教育体制やシステム再考の一助となり、ひいては救急外来受診患者の診察開始までの安全を担保し、患者家族の満足向上へとつながるものと考えられる。

【目的】
 A病院の救急外来における緊急度判定に伴う困難因子を明らかにする.

【研究方法】
1.研究デザイン:質的研究 関連因子探索研究 
2.研究対象者:昨年度A病院の救急外来に入職した看護師および救急救命士7名
3.研究期間:令和2年11月1日~12月31日
4.研究場所:A病院救急外来
5.データ収集方法
 1)インタビュー方法は半構造化面接法。
 2)インタビュー時間は業務時間内の30分を原則とし、別室にて研究者と研究対象者それぞれ1名で行う。
 3)インタビュー内容はICレコーダーへ録音し逐語録を作成する。
6.分析方法
  ICレコーダーに録音したインタビュー内容から作成した逐語録から緊急度判定における困難因子と考えられる内容を  コード化し、KJ法を用いてカテゴリー化を行った。
7.倫理歴配慮
  当院看護研究倫理委員会の承認を受け、本研究を実施した。

【結果】
1.有効回答7名/7名(看護師4/4名、救命士3/3名)、回答率100%
2.基本属性:救急外来勤務経験2.2年(1~5年)、緊急度判定経験者1/7名(14.2%)、JTAS取得者なし
3.インタビュー調査より困難因子と成り得ると考えられる20個のコードを抽出し、【現行の緊急度判定基準(システム)に  対する疑問のため、患者の緊急度判定に悩む】、【自身が行う緊急度判定と医師の臨床診断との間に大きな乖離を感じる】、【緊急度判定に基づいた適切な患者誘導(ベッドの選択)が分からない】、【緊急度判定を行うに当たって、部署内での教育体制が不足していると感じ、自身の緊急度判定に自信が持てず不安がある】、【緊急度判定中に求められるスキルの問題】の5つにカテゴリー化された。

【考察】
 A病院では「患者の通常血圧」を基準に循環動態に関する緊急度判定を行っているが、受診患者の中には自身の血圧を把握していない場合や、認知症・酩酊状態などの理由から基準となる患者の通常血圧を聴取できず、緊急度判定に難渋する事態に陥っている。さらには、厚生労働省が定義する高血圧基準(収縮期血圧140mmHg 以上)を用いたケースも混在していることから、緊急度判定における血圧評価に関連するコンサンセスの統一が急務である。
 調査対象者の大半は緊急度判定の経験が無く、入職時に緊急度判定に関するオリエンテーションを部署内教育として導入したが、現行の教育システムの不足が本調査結果から明らかとなった。特に事後検証を行う体制が不十分であったため、スタッフへ不安や疑問が生じていた。今後は多忙な業務内であっても、可能な限りタイムリーに事後検証を行うシステムを確立し、緊急度判定経験の少ないスタッフが自信を持ち、緊急度判定に臨むことのできる環境を目指していく。
 A病院における緊急度判定後の患者誘導に関しては、緊急度判定結果に加え、患者の安全面や感染制御の情報などを医師やリーダー看護師と共有したうえで行っている。医師やリーダー看護師が適切な患者誘導を判断するためには、緊急度判定を行ったスタッフのプレゼンテーション能力が不可欠であり、多職種との情報共有や交渉術といったスキルの底上げも緊急度判定に関連した部署内教育の要素として重要と考えられた。
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