第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 3.トリアージ②

[OD302] 3.トリアージ②

[OD302-04] 発熱患者のトリアージにおいて、年齢が入院予測に与える影響

○堀之内 香奈子1、竹下 諒1、中島 真寿美1、西元 千草1、佐藤 勇司1、田辺 夏奈1、飯田 京介1、富山 絢子1 (1. 横浜労災病院 救命救急センター)

Keywords:トリアージ、SIRS

【背景】
若年層の多い都市型医療圏において1-3次救急医療を提供する当院では、適切なトリアージを行うことは円滑で安全な救急医療の提供のために重要である。
緊急度判定支援システムJapanese Triage and Acuity System(以下JTAS)では、発熱患者のトリアージにおいてSIRS基準が用いられている。発熱患者は、SIRS基準2項目を満たすとJTAS上トリアージレベル2(緊急)と判定される。これは敗血症の早期発見・治療のためであるが、その中に感冒など若年の軽症者が多く含まれ、年齢により入院割合が大きく異なることが指摘されている。当院の先行研究において、インフルエンザなどの流行期となる冬季には若年層の入院割合が著しく低く、その中に重症な敗血症患者が極めて少ないことから、冬季に65歳未満のトリアージレベルを1段階下げることの妥当性・安全性を示した。しかし、年間を通しての妥当性や、適切な年齢のcut offは明らかではない。
【今回の研究】
1年間に発熱(>38℃)を主訴に独歩で来院し、心拍数・呼吸数からSIRS≧2項目を満たした患者を対象とし、65歳をcut offとして若年群と高齢群の2群に分けて入院割合を比較した。さらに、対象となった患者の入院に対する年齢のROC解析を行い、適切な年齢を評価した。
【方法】
研究期間:2019年4月-2020年3月
研究対象:上記期間中に発熱(>38℃)を主訴に当院救急外来を独歩受診し、SIRS2項目以上を満たした15歳以上の患者
調査方法:診療録・トリアージ問診票を基に検証した後ろ向き観察研究
JTASの基となるCanadian Triage and Acuity System導入時に定められたトリアージレベルごとの予測入院割合を基に、65歳未満(若年群)と65歳以上(高齢群)の2群に分けて入院割合を比較した。また、SIRS≧2項目を満たす患者に入院に対する年齢のROC解析を施行し、適切な年齢 cut offを調べた。統計解析にはEZRを用いた。
【倫理的配慮】
本研究は、当院倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
高齢群の入院割合が48.8%(62/127人)に対し、若年群は5.3%(25/472人)であった。性別・SpO2・収縮期血圧・診察開始時間を説明変数として多変量解析を行うと、高齢群に対する若年群のオッズ比:0.067と有意に低かった。また、入院に対する年齢のROC解析では、AUC:0.848と入院予測に有用である可能性があり、52歳をcut offとすると感度・特異度の和が最大となった。
【考察】
先行研究同様、年間を通しても発熱患者の入院割合は若年群で有意に低く、高齢群はトリアージレベル2、若年群はトリアージレベル5の予測入院割合に相当し、年齢によりトリアージレベルを調整することは適切と考えられる。また、年齢のcut offは前期高齢者の65歳としてきたが、ROC曲線からは52歳が最適cut offと考えられた。入院に対する感度・特異度・陽性的中率を比較すると、52歳(Sn:0.839, Sp:0.786, PPV:40.1%)に対し65歳(Sn:0.713, Sp:0.873, PPV:48.8%)であった。トリアージレベル2の予測入院割合は40-70%であることから、感度・陽性適中率から52歳をcut offとすることは妥当であると言える。
【結論】
発熱患者のトリアージにおいて若年の患者はオーバートリアージとなっている事が示された。52歳以下の発熱患者のトリアージレベルを下げることは妥当であり、円滑で安全な救急医療に繋がると考えられる。
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