[OD303-04] gradually onsetのACS患者についての調査
Keywords:トリアージ、ACS
【はじめに】急性冠症候群(以下、ACS)は、主に胸痛を主訴として急性心筋虚血を呈し、最悪の場合死に直結する病態である。そして、血流障害であるため一般的にその発症様式は数秒以内に起こる突然発症(以下、sudden onset)である。また、walk in受診患者に対する院内トリアージにおいて用いられる院内緊急度判定支援システム(以下、JTAS)によると、心原性胸痛の場合には15分以内の再評価や診察が必要とされるJTASレベル2緊急という判断になる。しかしながら、ACSであった場合に、15分待っていると致死的不整脈や心原性ショックなどにより生命の危機につながる可能性が高まる。そのため、すみやかに心電図を始めとした検査や医師の診察をはじめることが必要である。そして、同じ胸痛であっても日単位での発症様式(以下、gradually onset)の場合は血流障害よりも感染症や腫瘍などが疑われやすい。だが、A病院では1年間にgradually onsetのACSが5件あった。そこでgradually onsetの患者の内、ACSの診断となった患者(以下、ACS患者)とACSの診断とならなかった患者(以下、非ACS患者)の違いについて検討した。
【目的】gradually onsetで胸痛を主訴としたwalk in患者の中でACS患者と非ACS患者の背景を調査し、精度の高いトリアージ問診へとつなげていく。
【倫理的配慮】本研究は、個人が特定されないように配慮し、A病院の倫理員会の承認を得た。
【方法】2018年4月1日から2019年3月31日に胸痛を主訴としてA病院にwalk in受診した患者が対象である。その内、発症24時間以上経過したものをgradually onsetとして設定し、ACS患者と非ACS患者を比較した後ろ向き研究を実施した。内容は電子カルテに記載された年齢、急性冠症候群ガイドラインに記載された冠危険因子(高血圧、糖尿病、喫煙、家族歴、高コレステロール)と、随伴症状(失神、呼吸困難感、悪心、放散痛、冷汗、外観不良)といった患者背景を調査し、χ二乗検定で比較した。
【結果】期間中、gradually onsetの胸痛患者は125名であった。その内ACS患者は5名であった。患者背景において、χ2乗検定で比較するとP値は0.319~0.886であり、いずれの項目でも有意差を認める事はできなかった。
【考察】1施設の1年間の統計であり限界はあるが、患者背景において有意差は認められなかった。今回の研究結果を踏まえると、トリアージ問診において、胸痛が主訴の場合には患者背景を聴取することに意味はないと考えられる。むしろそれに時間をかけることは、ACSであった場合の治療への時間をかけることにつながるためデメリットでしかないと言える。もちろん明らかな筋骨格系疼痛の除外は必要だが、胸痛が主訴であればJTASレベル2緊急以上と速やかに判断し、以後の適切な検査治療へつなげていくことが必要である。また、ACS患者がgradually onsetであった理由については元々冠動脈が狭窄しており、狭心症発作がたびたび起こっていた可能性が考えられる。その他にも認知症により症状の表現が曖昧になった場合でもgradually onsetと受け取られた可能性がある。他にも鎮痛剤内服などによる症状のカバー、ACS以外の疾患が同時に発症することでgradually onsetとつながった可能性もある。そのため、今後症状をカバーしてしまうような認知機能や内服や既往も含めた調査も必要である。
【目的】gradually onsetで胸痛を主訴としたwalk in患者の中でACS患者と非ACS患者の背景を調査し、精度の高いトリアージ問診へとつなげていく。
【倫理的配慮】本研究は、個人が特定されないように配慮し、A病院の倫理員会の承認を得た。
【方法】2018年4月1日から2019年3月31日に胸痛を主訴としてA病院にwalk in受診した患者が対象である。その内、発症24時間以上経過したものをgradually onsetとして設定し、ACS患者と非ACS患者を比較した後ろ向き研究を実施した。内容は電子カルテに記載された年齢、急性冠症候群ガイドラインに記載された冠危険因子(高血圧、糖尿病、喫煙、家族歴、高コレステロール)と、随伴症状(失神、呼吸困難感、悪心、放散痛、冷汗、外観不良)といった患者背景を調査し、χ二乗検定で比較した。
【結果】期間中、gradually onsetの胸痛患者は125名であった。その内ACS患者は5名であった。患者背景において、χ2乗検定で比較するとP値は0.319~0.886であり、いずれの項目でも有意差を認める事はできなかった。
【考察】1施設の1年間の統計であり限界はあるが、患者背景において有意差は認められなかった。今回の研究結果を踏まえると、トリアージ問診において、胸痛が主訴の場合には患者背景を聴取することに意味はないと考えられる。むしろそれに時間をかけることは、ACSであった場合の治療への時間をかけることにつながるためデメリットでしかないと言える。もちろん明らかな筋骨格系疼痛の除外は必要だが、胸痛が主訴であればJTASレベル2緊急以上と速やかに判断し、以後の適切な検査治療へつなげていくことが必要である。また、ACS患者がgradually onsetであった理由については元々冠動脈が狭窄しており、狭心症発作がたびたび起こっていた可能性が考えられる。その他にも認知症により症状の表現が曖昧になった場合でもgradually onsetと受け取られた可能性がある。他にも鎮痛剤内服などによる症状のカバー、ACS以外の疾患が同時に発症することでgradually onsetとつながった可能性もある。そのため、今後症状をカバーしてしまうような認知機能や内服や既往も含めた調査も必要である。