第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 4.災害看護・終末期医療

[OD401] 4.災害看護.終末期医療

[OD401-02] 呼吸器疾患患者における意思決定支援の現状調査

○内海 由加里1 (1. 国家公務員共済組合連合会 高松病院)

キーワード:呼吸器疾患患者、リビングウィル、意思決定支援

【はじめに】
 高齢化社会の到来と慢性疾患患者の増大に伴い、がん患者だけでなく非がん患者の終末期ケアの重要性が認識されている。2018年厚生労働省より、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂がなされ、最期まで本人の生き方を尊重し、医療・ケアの提供について検討することが重要であると明示されている。また、医療・ケアを受ける本人が医療・ケアチームと十分話し合い、本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則であると示されており、その中で、意思決定支援を行うことは重要な課題である。しかし、呼吸器疾患の終末期患者は、予後予測が困難なため、終末期医療に関する意思決定に困難が伴う。患者本人や家族が望む意思決定支援への介入を行うことを目的に現状調査及び考察を報告する。
【目的】
呼吸器疾患患者の意思決定の現状を明らかにし、意思決定支援の取り組みについて考察する。
【方法】
期間・対象・方法:2019年度院内死亡患者のうち呼吸器疾患で死亡した患者76名に対して、意思決定の現状を後方視的調査。
【倫理的配慮】
本研究は個人が特定しないよう留意し、所属病院の倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】
 2019年度の院内死亡患者のうち呼吸器疾患で死亡した76名に対して意思決定の現状調査を行った結果、非がん性疾患71%、がん性29%であった。非がん性疾患は、肺炎・誤嚥性肺炎・間質性肺炎の順であった。年齢は、非がん性疾患81.2±13.9歳、がん性78.3±15.7であった。患者本人が延命治療を希望しないことが書面記載されていたのは非がん性・がん性1名ずつのみであった。終末期医療の方針についての話し合いを行なったのは非がん性疾患68%、がん性27%が臨死期であり、代理意思決定者へ行われていた。また、代理意思決定者はほぼ全員が配偶者や子供であった。心肺蘇生・呼吸管理・鎮静に対しては、本人・代理意志決定者の意思通りに実施されていた。
【考察】
 終末期治療の方針についての話し合いの時期は、 がん性は当院通院中が多く、予後予測可能であり比較的早期に可能であった。非がん性は救急搬送・紹介などの増悪期に関わるため信頼関係の構築や病状回復を目指して治療を行うことや、予後予測困難なことにより臨死期に多いことが要因考えられる。また、患者本人の自己決定を確認できなかったのは、回復に向けての期待を臨死期間際までもっていることや日本人として「死へのタブー視」があることが要因と考える。呼吸器疾患患者における意思決定支援への介入として、予後予測可能な評価ツールなどを用いて病状安定しているときからの病状理解や急性増悪に対する事前の準備や意思決定が行えるシステムを構築する必要がある。まずは意思決定しやすい環境づくりが必要と考え、判断材料となる一般的な終末期の状態、治療に関する情報(人工呼吸、緩和ケア、栄養療法について)の利点と短所の情報提供が行えるように写真や挿絵などを用いて、イメージできるような資料を作成し、運用を開始した。今後は、資料運用後のアンケート調査を行い、ブラッシュアップを行う必要がある。