第23回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

オンデマンド配信講演

第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 4.災害看護・終末期医療

[OD401] 4.災害看護.終末期医療

[OD401-03] COVID-19流行下における終末期患者の家族に対する救急看護師の看護実践と葛藤

○伊東 由康1、椿 美智博2 (1. 兵庫県立大学看護学部、2. 北里大学看護学部)

Keywords:COVID-19、終末期看護、家族

【目的】本研究では、COVID-19流行下において救急看護師の終末期患者の家族に対するどのような看護実践が阻害されているのかを明らかとするとともに、看護実践の阻害と葛藤との関連について検討することを目的とした。

【方法】全国の救命救急センターを有する医療機関から無作為抽出した施設のうち、調査協力が得られた30施設に所属する看護師計720名を対象にWebアンケート調査を行った。研究対象者にはWebアンケートのURLおよびQRコードを記載した説明文書を配布し、アンケートへの回答を求めた。アンケート項目には、対象者の基本属性に加え、先行研究に基づき独自に作成した「COVID-19流行による終末期患者の家族への看護実践頻度の変化(以下、看護実践頻度の変化)」28項目、「COVID-19流行による看護実践への葛藤(以下、葛藤)」1項目が含まれ、「看護実践頻度の変化」は「以前よりもしている」から「以前よりもぜんぜんしていない」の5件法、「葛藤」はVisual Analog Scale(VAS)を用いて左端を「まったく感じていない」、右端を「極めて強く感じている」とし回答を得た。得られたデータは記述統計量を算出し、回答の分布について分析した。また、「看護実践頻度の変化」28項目については探索的因子分析から構成因子を抽出し、各因子および基本属性を説明変数、「葛藤」を目的変数とした重回帰分析を行った。統計処理には、IBM SPSS 26.0 J for Windowsを使用、本研究は所属大学の研究倫理委員会の承認を得て実施した。

【結果】分析対象は222名 (有効回答率30.8%)であり、女性180名 (81.1%)、平均看護師経験年数15.3±7.9年、平均救急看護経験年数6.4±4.7年、認定・専門看護師21名(9.5%)であった。看護実践頻度の変化として、「以前よりもぜんぜんしていない」と回答した者の割合が高い項目は「家族の他に、他の家族や友人が来院できるようにすること」(54.1%)、「家族と患者だけで過ごす十分な時間をつくること」(37.8%)であった。一方で、「以前よりもしている」と回答した者の割合が高い項目は「家族が患者の状況や様子を知ることができるようにすること」(14.9%)、「家族の体調や心情を気遣うこと」(17.1%)であった。看護実践頻度の変化28項目の探索的因子分析では3因子17項目を採用し、第Ⅰ因子「家族の現状理解を促す看護実践」、第Ⅱ因子「患者と家族で過ごせる環境をつくる看護実践」、第Ⅲ因子「患者と家族の尊厳を尊重する看護実践」と命名した。重回帰分析の結果、救急看護経験年数(β=.162, t=2.233)、患者と家族で過ごせる環境をつくる看護実践(β=.188, t=2.367)が「葛藤」に関連する因子として抽出された。

【考察】COVID-19流行下において救急看護師は、これまで実践してきた終末期患者と家族とが一緒に過ごすことができるようにするという看護実践が阻害され、実践したくとも実践できない葛藤を生じていた。また、救急看護経験年数の高い看護師ほど葛藤が大きいことが明らかとなり、終末期での家族看護に対する役割認識や価値・信念が葛藤と関連することが示唆された。一方、患者と家族とが一緒に過ごすことができない状況に対し、救急看護師はこれまで以上に家族が患者の状況や様子を知ることができるよう実践しており、葛藤を抱えながらも状況に応じた望ましい看護実践を積極的に展開している実態が明らかとなった。