第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 4.災害看護・終末期医療

[OD401] 4.災害看護.終末期医療

[OD401-04] 災害時アクションカードの使用率向上を目指した取り組み 〜災害発生報告書の活用を通した実践報告〜

○蒲池 祥1、山本 みく1 (1. かわぐち心臓呼吸器病院)

Keywords:災害、アクションカード

災害時アクションカードの使用率向上を目指した取り組み
〜災害発生報告書の活用を通した実践報告〜
【目的】
災害時の初期行動は多岐に渡る。様々な役割を果たすには、日頃から災害対応手順の周知し初期行動を各自が把握しておく事が重要である。
当院の災害看護チーム会(以下、チーム会)では、2020年度より部署別、災害別の初期行動アクションカード(以下、アクションカード)を導入した。しかし、その認知度は低く、地震や停電発生時にアクションカードが活用されていない事が明らかとなった。
アクションカードの使用率を向上させる事を目的に、災害発生報告書(以下、報告書)を活用し意識付けを行うことで、アクションカード使用率が向上したかを調査する。また、報告書を元に現在のアクションカードの内容がより実践的なものとなるよう、課題を検証する。
【方法】
1)調査、実践方法
2020年12月、これまで中等度災害a)から義務付けていたアクションカードの使用と報告書提出を、軽度災害b)から行うよう周知した。2021年1月1日から6月30日までの6ヶ月間に発生した災害に対する報告書の内容から、アクションカード使用率を調査した。また、アクションカード使用した場合は、「内容の不明確な点」や「行動を行う上で判断に困った事」を調査した。使用していない場合は、災害時に使用する意義を再度説明し、軽度災害でも使用するようフィードバックした。
語彙の定義:a)中等度震災:震度3以上の地震、火災、浸水、長時間停電、長時間のシステムトラブル
b)軽度災害:震度2以下の地震、短時間停電、短時間のシステムトラブル
2)倫理的配慮
当院の倫理審査委員会にて承認。
【結果】
調査期間中に発生した災害は6件、それに対し報告書は100%提出されていた。アクションカード使用率は調査当初は0%だったが6ヶ月後には66%まで上昇し、後半にかけて使用率が高くなった。
また、報告書を通してアクションカードへの意見が複数あげられた。内容は、「避難経路図が見づらい」「エレベーターを使用できるか迷った」「ME機器対処方法の明記がない」であった。それらをもとに、避難経路図の色別化と図の拡大、被災直後のエレベーターの使用禁止、ME機器のストッパーを必ず1箇所かけることをアクションカードに追加した。浸水災害はなかったが「浸水時は、どこまで水が来るかイメージできない」との意見があったため、浸水時の最低浸水ラインがわかるよう1階フロアに置いてある処置ワゴン床から50cm部分に黄色テープで目印を付けアクションカードに明記した。
【考察】
研究対象期間に発生した災害の発生件数が少なく、報告書での意識付けがアクションカードの使用率増加と関連したか言及するには限界がある。しかし、アクションカードの使用率は後半になるに従い増加していた。そのことから、報告書を毎回記載し、その都度アクションカードの使用の有無や、修正点の洗い出しを行う事が、アクションカードへの意識を高めることに繋がったのではないかと推測する。
また今回、アクションカードの内容を複数項目で改訂することができた。現場の初期行動につながるより実践的なものとなるよう修正するためには、実際に活用しながら修正点を見出すことが効果的であったと思われる。また、アクションカードへの関心が高まったことにより、実際には発生していない災害への意識も高まり、未然に内容修正できたことも評価できる。
報告書提出の義務化とそれに対するフィードバックを今後も続けることにより、アクションカードの使用率上昇と内容のさらなる質向上が期待できると考える。