[OD501-05] COVID-19患者に対する16時間の腹臥位療法~スキントラブル・口腔内トラブルの分析と対策の検討~
Keywords:COVID-19、腹臥位療法、スキントラブル
【はじめに】
米国集中治療学会から発表されたCOVID-19の治療に関する診療ガイドラインでは、人工呼吸器を装着した患者に対して12時間から16時間の腹臥位療法が推奨されている。長時間の腹臥位による合併症は、圧迫による褥瘡が最も多くみられている。当救命センターでは、重症COVID-19患者のなかでも入院時のP/F150以下の患者を目安に16時間の腹臥位療法を実施しているが、重大な合併症は発生していない。
スキントラブル予防としてはメディカルパッドの馬蹄タイプを頭部、ドームタイプを体幹、四肢にはソフトナース®と体圧分散式クッションを使用、1時間に1度、四肢・頭部を15秒程度挙上し除圧を実施した。またアンカーファスト®を使用し、腹臥位時には気管チューブを口角へ移動させた。しかしスキントラブルと口腔内トラブルは多くの患者に合併していたことから、その要因を分析したので報告する。
【目的】
16時間の腹臥位によるスキントラブル・口腔内トラブルとその要因を明らかにし、今後の対策を検討する。
【方法】
1.対象
2020年11月から2021年4月に当救命センターに入院した重症COVID-19患者のなかで、気管挿管を行った36名のうち16時間の腹臥位療法を1度でも実施した25名。
2.方法
①スキントラブルと口腔内トラブルの発生状況をカルテから情報収集した。
②スキントラブルと口腔内トラブルが発生しなかった患者をA群、1~4カ所発生していた患者をB群、5カ所以上発生していた患者をC群と3群に分け、各群と性別・年齢・BMI・血液検査データ・栄養状態・腹臥位施行時間との関連性をマンホイットニー検定にて分析した。
【倫理的配慮】
当救命センターの倫理委員会の審査を受け承認を得た。演題発表に関連し開示すべきCOI関係にある企業などはありません。
【結果】
スキントラブルまたは口腔内トラブルは21名に生じており顔面から頸部が10名、体幹が6名、四肢が2名、口腔内トラブルは13名であった(重複あり)。スキントラブルにより腹臥位継続困難であった症例は2名であった。スキントラブルや口腔内トラブルなどを全く起こさなかった患者は4名(A群)、1~4カ所以上起こした患者は16名(B群)、5カ所以上起こした患者は5名(C群)であり、A・B・C群と予測される要因との関連性を分析した。結果、有意差を認めたのは腹臥位合計実施時間のみであり、長時間になるとスキントラブルと口腔内トラブルが有意に多く発生していた。
A群の平均腹臥位時間は33.5±6.2時間、B群の平均腹臥位時間は108.4±56.6時間、C群の平均腹臥位時間は150.4±63.1時間であった。体幹のスキントラブル予防として使用したオプサイト®では水疱を形成し、白色ワセリン塗布では予防効果はなかった。手術時に使用されるリモイス®パッドを発赤部に貼付したところ、症状の悪化はみられなかった。
【考察】
メディカルパッドは局所圧迫を最小限に抑え、身体を均一な圧力で支えることから腹臥位に有用と考える。しかし顔面はメディカルパッドと接する面積が局所的であり、かつ顔面は突出部が多く、重力が集中して加わるためスキントラブルを生じやすいと考える。
体幹の発赤部位に貼付したリモイス®パッドは悪化を防いでいたことから、腹臥位を繰り返し実施する可能性がある患者に皮膚保護剤を貼付することで、摩擦やズレを予防しスキントラブルの予防効果が期待できると考えられた。
口腔内トラブルは気管チューブによる同一部位の圧迫や、ヘパリン持続投与の影響によるものと考えられる。頸部から顔面のスキントラブルと口腔内トラブルへの対策は今後の課題である。
米国集中治療学会から発表されたCOVID-19の治療に関する診療ガイドラインでは、人工呼吸器を装着した患者に対して12時間から16時間の腹臥位療法が推奨されている。長時間の腹臥位による合併症は、圧迫による褥瘡が最も多くみられている。当救命センターでは、重症COVID-19患者のなかでも入院時のP/F150以下の患者を目安に16時間の腹臥位療法を実施しているが、重大な合併症は発生していない。
スキントラブル予防としてはメディカルパッドの馬蹄タイプを頭部、ドームタイプを体幹、四肢にはソフトナース®と体圧分散式クッションを使用、1時間に1度、四肢・頭部を15秒程度挙上し除圧を実施した。またアンカーファスト®を使用し、腹臥位時には気管チューブを口角へ移動させた。しかしスキントラブルと口腔内トラブルは多くの患者に合併していたことから、その要因を分析したので報告する。
【目的】
16時間の腹臥位によるスキントラブル・口腔内トラブルとその要因を明らかにし、今後の対策を検討する。
【方法】
1.対象
2020年11月から2021年4月に当救命センターに入院した重症COVID-19患者のなかで、気管挿管を行った36名のうち16時間の腹臥位療法を1度でも実施した25名。
2.方法
①スキントラブルと口腔内トラブルの発生状況をカルテから情報収集した。
②スキントラブルと口腔内トラブルが発生しなかった患者をA群、1~4カ所発生していた患者をB群、5カ所以上発生していた患者をC群と3群に分け、各群と性別・年齢・BMI・血液検査データ・栄養状態・腹臥位施行時間との関連性をマンホイットニー検定にて分析した。
【倫理的配慮】
当救命センターの倫理委員会の審査を受け承認を得た。演題発表に関連し開示すべきCOI関係にある企業などはありません。
【結果】
スキントラブルまたは口腔内トラブルは21名に生じており顔面から頸部が10名、体幹が6名、四肢が2名、口腔内トラブルは13名であった(重複あり)。スキントラブルにより腹臥位継続困難であった症例は2名であった。スキントラブルや口腔内トラブルなどを全く起こさなかった患者は4名(A群)、1~4カ所以上起こした患者は16名(B群)、5カ所以上起こした患者は5名(C群)であり、A・B・C群と予測される要因との関連性を分析した。結果、有意差を認めたのは腹臥位合計実施時間のみであり、長時間になるとスキントラブルと口腔内トラブルが有意に多く発生していた。
A群の平均腹臥位時間は33.5±6.2時間、B群の平均腹臥位時間は108.4±56.6時間、C群の平均腹臥位時間は150.4±63.1時間であった。体幹のスキントラブル予防として使用したオプサイト®では水疱を形成し、白色ワセリン塗布では予防効果はなかった。手術時に使用されるリモイス®パッドを発赤部に貼付したところ、症状の悪化はみられなかった。
【考察】
メディカルパッドは局所圧迫を最小限に抑え、身体を均一な圧力で支えることから腹臥位に有用と考える。しかし顔面はメディカルパッドと接する面積が局所的であり、かつ顔面は突出部が多く、重力が集中して加わるためスキントラブルを生じやすいと考える。
体幹の発赤部位に貼付したリモイス®パッドは悪化を防いでいたことから、腹臥位を繰り返し実施する可能性がある患者に皮膚保護剤を貼付することで、摩擦やズレを予防しスキントラブルの予防効果が期待できると考えられた。
口腔内トラブルは気管チューブによる同一部位の圧迫や、ヘパリン持続投与の影響によるものと考えられる。頸部から顔面のスキントラブルと口腔内トラブルへの対策は今後の課題である。