第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 5.重症患者看護②

[OD502] 5.重症患者看護②

[OD502-04] 重症外傷患者におけるシミュレーション教育を用いた取り組み

○臼方 静華1、眞中 彩希1、原 沙也加1、川西 茉旺1、藤本 礼也1、堀内 奈美1、斉藤 伊都子2 (1. 順天堂大学医学部附属浦安病院救命救急センター外来、2. 順天堂大学医学部附属浦安病院看護部)

Keywords:シミュレーション教育、外傷看護

Ⅰ.目的
 重症外傷患者に対する処置のシミュレーション教育(以下、教育)による、看護師の不安の軽減と患者受け入れ体制の円滑化について検討する。
Ⅱ.方法
 当院救命救急センター外来に所属する看護師に対して、2020年4月から2020年12月に勉強会と教育を実施した。勉強会参加者は1回目20名中17名、2回目は19名だった。実際に搬送された事例を参考に、受傷機転、バイタルサイン、症状を示した3事例についてランダムに事例を選択し、5分間で受け入れに必要な物品を実際に準備ができるように教育を行った。1回目の教育参加者は13名中7名、2回目が6名、3回目4名であった。例えば、「20代女性、ビルの4階から墜落し皮下気腫、顔面外傷を認めレベル3桁、血圧は測定できず、ショックバイタルである」という事例に対し、輪状甲状靱帯切開、胸腔ドレーン、REVOA、鼠経シースなどの準備ができるように教育した。師長・主任・外傷チームメンバーを除き研究に同意を得られた13名を対象に、実施前後での外傷看護に対する印象や活動状況の変化についてアンケート調査を用いて比較した。倫理的配慮として本研究への参加の可否は自由意志であり拒否による不利益はなく、同意の撤回も可能であること、及び個人情報の保護について書面にて説明し同意を得た。また、研究に同意しなかった場合も教育には参加できることを説明した。
Ⅲ.結果
 アンケート調査では、外傷のイメージについて「処置介助が煩雑に感じる」「苦手、怖いと感じる」などの意見が多く挙げられた。救急隊の情報からABCDの異常の有無の評価について「できた」と回答した割合は全ての項目が3回目には100%に上昇した。またABCDの管理に必要な物品が準備できたかについてはA、B、Dにおいて3回目には100%に上昇した。Cは「できた」と回答したのは1回目が14%であったが、2・3回目には50%に上昇した。 外傷に対する意識の変容については「受け入れに対する準備や不安が無くなった」に関して、1回目は「当てはまる」「やや当てはまる」が67%、3回目は100%であった。「外傷事例の対応をすることが怖いと感じる」に関しては、1回目は「当てはまる」が67%、「やや当てはまる」が16%、「やや当てはまらない」が17%であるのに対し、3回目では「やや当てはまる」が100%であった。
Ⅳ.考察
 来院前のABCD評価ができているにも関わらず、処置物品に過不足があることは外傷処置に不慣れであることが原因であると考える。教育を重ねるごとに不安や焦りを感じるスタッフは減少しており、繰り返しの実施が円滑な患者受け入れ体制の準備や安全な処置介助、看護の実践に繋がると考える。一方で、恐怖心の軽減を図ることはできなかった。しかし、重症外傷患者に対する不安や焦りは減少傾向であり、処置の流れを理解することで治療の流れを見据えることができたからではないかと考えられ、教育は有意義であると考える。
Ⅴ.結論
 重症外傷教育の実施により恐怖心はなくならなかったが不安や焦りを感じるスタッフは減少傾向であった。教育を通して救急隊の来院前情報からABCDの評価ができ、重症外傷患者に必要な物品、処置内容や処置介助の流れなどが想起できるようになったことで、今後はより円滑な患者の受け入れが期待できると考える。今後も定期的な教育を実施し、看護師の不安の軽減や患者受け入れ体制の円滑化に努めることが必要であると考える。