[OD502-05] ICU入室中の新型コロナウイルス感染症重症患者における便秘の現状
Keywords:便秘、新型コロナウイルス感染症重症患者、鎮痛・鎮静薬、筋弛緩薬
はじめに
ICU入室中の新型コロナウイルス感染症重症患者は、気管挿管や腹臥位療法等の治療や処置に伴い、鎮痛・鎮静薬や筋弛緩薬の使用、離床の遅延等が生じる。臨床的特徴として、鎮静薬に対する抵抗性や肺傷害の原因となる吸気努力の亢進が観察され、深鎮静で管理を行うことがある。そのため、鎮痛・鎮静薬の投与は高容量に至り、それらの複数の因子は、消化管運動の低下を招く。特に気管挿管中便秘を生じた患者に抜管後頻回な排便が見られると、更なる酸素需要の増加やせん妄発症の誘因となっていることを臨床で見受ける。また便秘は、腸管内での便の貯留により、横隔膜が挙上し運動の制限を起こすことや腸管蠕動の停滞による嘔吐等様々合併症の原因にもなる。このように便秘は、患者予後に関わる二時的合併症発症の原因となるため、ICU入室の早期より介入が必要である。今回、ICUに入室した新型コロナウイルス感染症重症患者の排便と患者状況について調査したことを報告する。
目的
ICUに入室した新型コロナウイルス感染症重症患者の便秘の現状調査。
方法
2021年2月~2021年5月の間、A病院ICUに鎮痛・鎮静薬を投与し気管挿管を行った状態で入室した患者の排便状況とそれに影響する因子の分析・検討を行う(排便回数、排便量・性状、麻薬性鎮痛薬投与量、鎮静薬投与量、筋弛緩薬投与量、経腸栄養投与量、RASS、CPOT、IN-OUTバランス、腸管蠕動改善薬・緩下剤使用量、離床状況、年齢、性別、各種採血データ等)。また便秘は、日本内科学会が示している、「3日以上排便がない状態、または毎日排便が合っても残便感がある状態」と定義した。
倫理的配慮
報告するにあたり個人が特定されないように配慮することを説明し、患者本人より了承を得た。著者は、eAPRIN研究者コースを修了している。(修了者番号:AP0000206910)
結果
対象患者は12名。全患者入室24時間以内の早期に経腸栄養を開始し、腸管蠕動改善薬・緩下剤を投与した。気管挿管中の離床は、看護師がヘッドアップと他動的な関節可動域訓練を施行。経日的に腹部レントゲン撮影を行い腸管内ガスや便の蠕動、腹部膨満、腸蠕動音等の評価を行った。対象患者12名のうち全患者がICU入室中3日以上の排便がなく、平均で8.54±2.51日であった。また、全患者が気管挿管中にフェンタニル塩酸塩、プロポフォールを投与。9名がデクスメデトミジンを投与。9名が腹臥位療法施行に伴い、ロクロニウムを投与していた。5名の患者が麻薬性鎮痛薬・鎮静薬を投与終了し抜管または気管切開後、平均で0.92±0.77日以内に排便があり、その後1-3回/日と良好な排便コントロールがついた。
考察
ICUに入室した新型コロナウイルス感染症対象患者全例で便秘が生じていた。気管挿管や腹臥位療法施行に伴い、麻薬性鎮痛薬や鎮静薬、筋弛緩薬を入室直後より使用していることやそれに伴う身体活動性の低下は消化酵素の分泌抑制や消化管の蠕動低下に影響し、便秘を生じる一因であったと考えられる。抜管または気管切開後48時間以内に5名の患者に排便があった。抜管に伴う麻薬性鎮痛薬等の投与終了や身体活動性が向上し自動運動が可能になることは、消化管蠕動を促進し排便コントロールを行う上で必要であると考える。それらのことから、気管挿管中から不要な鎮痛・鎮静薬投与を避けることや、早期離床に自動運動を組み込むこと等の良好な排便コントロールへの介入について検討することが、今後の課題である。
ICU入室中の新型コロナウイルス感染症重症患者は、気管挿管や腹臥位療法等の治療や処置に伴い、鎮痛・鎮静薬や筋弛緩薬の使用、離床の遅延等が生じる。臨床的特徴として、鎮静薬に対する抵抗性や肺傷害の原因となる吸気努力の亢進が観察され、深鎮静で管理を行うことがある。そのため、鎮痛・鎮静薬の投与は高容量に至り、それらの複数の因子は、消化管運動の低下を招く。特に気管挿管中便秘を生じた患者に抜管後頻回な排便が見られると、更なる酸素需要の増加やせん妄発症の誘因となっていることを臨床で見受ける。また便秘は、腸管内での便の貯留により、横隔膜が挙上し運動の制限を起こすことや腸管蠕動の停滞による嘔吐等様々合併症の原因にもなる。このように便秘は、患者予後に関わる二時的合併症発症の原因となるため、ICU入室の早期より介入が必要である。今回、ICUに入室した新型コロナウイルス感染症重症患者の排便と患者状況について調査したことを報告する。
目的
ICUに入室した新型コロナウイルス感染症重症患者の便秘の現状調査。
方法
2021年2月~2021年5月の間、A病院ICUに鎮痛・鎮静薬を投与し気管挿管を行った状態で入室した患者の排便状況とそれに影響する因子の分析・検討を行う(排便回数、排便量・性状、麻薬性鎮痛薬投与量、鎮静薬投与量、筋弛緩薬投与量、経腸栄養投与量、RASS、CPOT、IN-OUTバランス、腸管蠕動改善薬・緩下剤使用量、離床状況、年齢、性別、各種採血データ等)。また便秘は、日本内科学会が示している、「3日以上排便がない状態、または毎日排便が合っても残便感がある状態」と定義した。
倫理的配慮
報告するにあたり個人が特定されないように配慮することを説明し、患者本人より了承を得た。著者は、eAPRIN研究者コースを修了している。(修了者番号:AP0000206910)
結果
対象患者は12名。全患者入室24時間以内の早期に経腸栄養を開始し、腸管蠕動改善薬・緩下剤を投与した。気管挿管中の離床は、看護師がヘッドアップと他動的な関節可動域訓練を施行。経日的に腹部レントゲン撮影を行い腸管内ガスや便の蠕動、腹部膨満、腸蠕動音等の評価を行った。対象患者12名のうち全患者がICU入室中3日以上の排便がなく、平均で8.54±2.51日であった。また、全患者が気管挿管中にフェンタニル塩酸塩、プロポフォールを投与。9名がデクスメデトミジンを投与。9名が腹臥位療法施行に伴い、ロクロニウムを投与していた。5名の患者が麻薬性鎮痛薬・鎮静薬を投与終了し抜管または気管切開後、平均で0.92±0.77日以内に排便があり、その後1-3回/日と良好な排便コントロールがついた。
考察
ICUに入室した新型コロナウイルス感染症対象患者全例で便秘が生じていた。気管挿管や腹臥位療法施行に伴い、麻薬性鎮痛薬や鎮静薬、筋弛緩薬を入室直後より使用していることやそれに伴う身体活動性の低下は消化酵素の分泌抑制や消化管の蠕動低下に影響し、便秘を生じる一因であったと考えられる。抜管または気管切開後48時間以内に5名の患者に排便があった。抜管に伴う麻薬性鎮痛薬等の投与終了や身体活動性が向上し自動運動が可能になることは、消化管蠕動を促進し排便コントロールを行う上で必要であると考える。それらのことから、気管挿管中から不要な鎮痛・鎮静薬投与を避けることや、早期離床に自動運動を組み込むこと等の良好な排便コントロールへの介入について検討することが、今後の課題である。