第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 5.重症患者看護④

[OD504] 5.重症患者看護④

[OD504-01] 高度救命救急センターに勤務する看護師が捉えた重症熱傷患者の看護援助とその困難

○村中 沙織1、牧野 夏子2 (1. 札幌医科大学附属病院 高度救命救急センター病棟、2. 札幌医科大学附属病院 ICU病棟)

Keywords:熱傷看護、看護援助、困難

【目的】重症熱傷患者は治療の複雑性や多くの診療科の介入が必要なことから高度救命救急センター等の高度医療機関に搬送される。重症熱傷患者の看護援助は、熱傷の生理学的変化に対応する専門的知識を土台とし、複合的な臨床判断や熱傷処置等に伴う多職種連携、熱傷による障害受容の過程を理解した精神的援助等が求められる。そのため、重症熱傷患者の看護援助は熟練した経験知が必要であり困難を抱きやすいことが推察される。本研究の目的は高度救命救急センターに勤務する看護師が捉えた重症熱傷患者の看護援助とその困難を明らかにすることである。
【方法】2020年9月、高度救命救急センターの看護師6名を対象にフォーカス・グループ・インタビュー(以下、FGI)を行った。FGIに先立ち研究協力者には基本属性を紙面で確認した。FGIの内容は重症熱傷患者の看護援助とその困難で構成した。データ分析は逐語録から熱傷看護患者の看護援助とその困難についてそれぞれ抽出し意味内容ごとに要約した後、テキストマイニング(KH Corder 3)を用いて上位頻出語、共起ネットワーク分析を行った。倫理的配慮として研究者が所属する施設の看護研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。研究協力者に文書で研究趣旨・目的、研究参加の自由意思、研究協力諾否の自由、匿名性と守秘義務の遵守、データの保管・廃棄方法、FGIで得られた情報の守秘義務、結果の公表方法等を説明し同意を得た。
【結果】研究協力者の背景は男性3名、女性3名、看護師経験年数は8.8±3.2年、救急看護経験年数は5.3±1.4年であった。テキストマイニングの上位頻出語の結果は、看護援助は「患者」47が最も多く、「家族」36、「処置」25と続き、困難は「患者」46が最も多く、「熱傷」36、「難しい」28と続いていた。共起ネットワーク分析の結果から重症熱傷患者の看護援助(図)は【治療の説明やリハビリテーションなどのケアの必要性などの判断と安静度の確認】【患者の全身状態の観察と熱傷創部の管理と工夫】【変化や異常への対応】【形成外科医師との痛みの情報共有と経験を活かした被覆方法の提案】【終末期と感じた際の見た目を考慮した創処置と家族面会の調整】の5つのカテゴリー、困難は【治療が長期に渡ることへの思い】【患者が自分の姿と対面するタイミング】【不十分なルート固定による事故回避の管理】【ボディイメージのケアと便に対応する熱傷創管理の大変さ】【熱傷処置と精神的ケアの知識不足】【重症患者の鎮静鎮痛薬管理と急性期における予後を含めた家族アプローチの難しさ】の6つのカテゴリーが抽出された。
【考察】熱傷患者の看護援助は、全身管理と安全管理を含めた熱傷創管理、家族の精神的なケアが支柱であった。高度救命救急センターの看護師は主に重症熱傷患者の急性期ケアを担うことから、異常の早期発見と対応、熱傷創の管理、被覆管理などに配慮と工夫を行い、終末期には患者の容姿に配慮した処置と家族ケアを行っていた。一方で熱傷創部でのルート固定などの安全管理、排便管理、回復期の受傷後の患者の自己との対面やボディイメージの変容に対する看護援助の難しさを感じていることが明らかとなった。熱傷看護の看護援助と困難の結果は対応しており、患者個々に創管理や事故回避、苦痛緩和のための配慮や複雑な精神的ケアを必要とし、治療が長期にわたるため病期に応じた患者及び家族へのケア実践となることから、知識や経験の不足を強く感じたと考える。今後の重症熱傷患者ケアの充実のため、知識や経験不足を補う実践に基づく教育体制の整備が必要と考える。
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