第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 5.重症患者看護④

[OD504] 5.重症患者看護④

[OD504-04] 救命センター看護師への嚥下評価表の導入と実践課題

○吉野 沙織1、伊藤 杏子1、山下 将志1、中本 亜也1 (1. 聖マリアンナ医科大学病院救命センター)

Keywords:早期経口摂取、嚥下評価、急性期

【目的】
当院救命センターでの嚥下評価は、言語聴覚士(Speech Language Hearing Therapist以下ST)が行うことが多かった。しかし、専属のSTは配置されていないため、嚥下評価が遅れることがあった。さらに、COVID-19感染症患者に対する嚥下評価は看護師が行っているが、個々の知識や経験に左右されている。そこで、看護師が安全かつ統一した嚥下評価を実施し、急性期患者が早期に経口摂取を開始できることを目的とした嚥下評価表を作成した。嚥下評価表の導入を行った結果、実践課題が明らかになったので報告をする。
【方法】
医師、STと嚥下評価の導入基準と評価表を作成した。導入基準は、意識レベル、抜管後の経過時間、循環動態、姿勢、咳嗽反射の5項目を設定した。対象は救命センター入院患者で、導入基準を満たし、医師と嚥下評価を実施することの共通認識が得られた患者とした。口腔機能を評価し、評価方法を改訂水飲みテストと1%とろみ水を使用したスクリーニングテストに振り分けた。評価結果に対する食形態はST指示のもと設定した。評価を実施する看護師は、STによる嚥下のメカニズムに関する講習を受けて、実際の評価を学習したものとした。2020年11月から2021年2月までに実施された嚥下評価について、後ろ向きに調査し、検討を行った。
【倫理的配慮】
個人情報管理者を立て適切に管理し、研究終了後は破棄した。本研究は、研究者が所属する生命倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:第5276号)。
【結果】
実施された嚥下評価66件中、48件で評価後に食事開始した。うち47件は、食事開始後も有害事象は認めず経過し、1件は既往に認知症のある患者で食事開始後にむせ込みを認め絶食管理となった。評価結果と実際に開始された食形態で相違があった件数は10件で、患者希望1件、医師判断2件、歯の問題4件、結果より食形態を下げて開始していた。他3件は、気管切開患者、嗄声を認める患者、認知症のため空嚥下が確認できない患者で、評価表では判断が困難な点があり、STに相談し食形態を決定した。食事開始出来なかった18件の内訳は、病態により欠食6件、誤嚥のリスクありと評価された9件、看護師の判断で欠食となった3件であった。看護師の判断で欠食となった3件の判断理由は3つあり、①意識レベル②嚥下評価後にSpO2の低下を認めた③評価後時間をおいてムセと湿性咳嗽を認めたことであり、誤嚥のリスクが高いと判断していた。
【考察】
食事開始後48件中47件で有害事象を認めなかったことから、看護師の嚥下評価により安全に経口摂取を開始することができたと考える。食事開始後に誤嚥を認めた1件は認知症患者であり、認知症の程度によっては嚥下障害の程度が異なり、評価自体が困難な場合もある。そのため、認知症患者においては、STと協働した嚥下評価の実施と食事開始後も継続した観察を行う必要があることを示唆する。評価表では経口摂取可能と判断できるものの、看護師が判断し欠食となった事例が3件あった。急性期患者において、意識レベル、呼吸状態に懸念がある場合の経口摂取は、全身状態悪化を招く恐れがある。全身状態を考慮して看護師が欠食を判断した3例は、これらを回避できたと考える。また、嚥下評価時のみならず、ベッドサイドで継続した観察ができる看護師が評価を実践することで、より安全に経口摂取の可否を判断できたと考える。今回、安全を考慮して嚥下評価を行なう看護師を限定した。今後は多くの看護師が日常的に評価を行えるよう、教育を充実することが課題である。