第23回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

オンデマンド配信講演

第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 5.重症患者看護④

[OD504] 5.重症患者看護④

[OD504-05] 当院救命救急病棟におけるせん妄予防パンフレットの効果と有用性の検討

○大屋 勇人1 (1. 足利赤十字病院)

Keywords:せん妄

【目的】
 日本集中治療医学会から示されている『日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン』では、せん妄発症に関連した患者側の危険因子に、年齢、重症度、感染(敗血症)、既存の認知症の4つをあげている。また、せん妄患者への介入は非薬理学的介入を推奨している。
当院救命救急病棟ではせん妄予防に向けた、統一した対策を講じていなかった。当病棟に入院・転入する患者もせん妄の危険因子を有することが多く、せん妄発症の可能性が高いと考えられた。そのためせん妄発症率を明らかにし、発症予防を図る必要があると考えた。
そのような背景により2018年8月からintensive care delirium screening checklist(ICDSC)を用いたせん妄スクリーニングを開始した。また、せん妄患者への非薬理学的介入として、2019年8月から患者家族にせん妄予防パンフレットでの説明を開始した。
本研究の目的は、ICDSCを用い当院救命救急病棟におけるせん妄発症率を明らかにするとともに、せん妄予防パンフレットの有用性を検討することである。
【方法】
2018年8月~2019年1月、2019年8月~2020年1月に当院救命救急病棟に入棟した患者のうち①15歳未満の小児、②在棟期間中のICDSCでの評価がすべて(-)である患者を除外例とした。2018年8月~2019年1月を非介入群721名、2019年8月~2020年1月を介入群759名の2群に分類した。
介入群の家族に対して以下の内容でせん妄予防パンフレットを作成し実施した。
①患者家族に対してせん妄予防のための情報提供を行う。
②患者に対して見当識に関する情報提供と認知機能への刺激を与えることを目的として、補聴器や眼鏡、家族の写真やカレンダー、時計などの準備を患者家族に依頼する。
検討項目は年齢、性別、入院時sequential organ failure assessment(SOFA)score、入院前認知症有病率、リハビリテーション科介入率、死亡率、救命病棟入棟中のせん妄発症率、急性期在院日数として、後方視的に2群間を比較した。各項目をχ²検定、Mann-WhitnyのU検定で統計解析し、有意水準5%未満とした。
【倫理的配慮】
本研究はA病院倫理委員会にて承認を得た。
【結果】
 性別とリハビリテーション科介入率では有意な差を認めなかった。年齢、認知症有病率、SOFA scoreは介入群で有意に高かった。せん妄発症率は非介入群(27.3%)と介入群(21.10%)で介入群が有意に低かった。死亡率は非介入群(9.40%)と介入群(9.70%)で有意な差を認めなかった。急性期在院日数は非介入群(25.49±27.85日)と介入群(24.79±27.77日)で有意ではないが低い傾向があった。
【考察】
 介入群は非介入群と比較し、年齢、認知症有病率、SOFA scoreが有意に高く、せん妄を発症しやすい背景であった。このような患者背景の中でも、せん妄予防パンフレットを用いた介入の結果、せん妄発症率は有意に低下し、急性期在院日数に関しては有意な差を認めなかった。せん妄予防パンフレットを用いた介入は、せん妄発症率を低下させることが示唆された。