[OD601-01] 救命救急センターにおける自殺未遂患者の家族に対する熟練看護師の看護実践
Keywords:自殺未遂患者、家族看護、熟練看護師、救命救急センター
【はじめに】
自殺未遂者は、1年以内に60%以上の人が再企図しており、再企図率は高い(衛藤ら,2012)。自殺未遂患者が搬入される救命救急センターは、再企図予防に対して大きな役割を担っている。また、再企図予防には家族が与える影響が大きいと言われている(Sun et el, 2012)。しかし、救命救急センターの看護師による自殺未遂患者の家族に対する看護の詳細については明らかにされていない。
【目的】
本研究の目的は、救命救急センターにおける自殺未遂患者の家族に対する熟練看護師の看護実践を明らかにすることである。
【方法】
研究対象者は、精神科があり、複数の救急看護認定看護師のいる近畿の救命救急センターに勤務する、当該分野の臨床経験年数が5年以上の熟練看護師で、救急看護認定看護師または急性重症患者看護専門看護師、管理者からの推薦者の、いずれかを満たすものを対象とした。半構造化インタビューを実施し、逐語録を質的帰納的に分析した。本研究は、神戸市看護大学の倫理審査の承認を得て実施した。倫理的配慮として、研究への参加は自由であり、研究の途中でも参加を中止できること、個人が特定されないようにすることを、文書と口頭で説明し、同意書を取得した。
【結果】
研究対象者は、女性8名、男性1名で、平均年齢は39.4歳、平均臨床経験年数は17.2年 、救命救急センターでの経験年数は14.2年であり、専門看護師または認定看護師の資格を有するものは7名だった。分析の結果、4つのカテゴリ、15のサブカテゴリが抽出された。熟練看護師は、患者の搬入直後から関係性を創ろうと家族の心情に添って関わっていた。そして、治療中の患者を心配する家族の中で、一番冷静で精神状態が安定している家族を見極めて患者の身体状況や治療への理解を促していた。また、患者に対する家族の気持ちや、自殺未遂前の家族との関係性を予測して、家族と患者に対して、できるだけ悪影響のないような状況を意図的に作り自殺未遂によって患者との関係性が悪化しないように気を配っていた。さらに、家族の状況を捉えて、必要になりそうな社会資源を導入するなどの調整を行い、退院後に患者の変化に家族が対応できるように整えていた。
【考察】
熟練看護師の看護実践は、家族の精神状態を安定させ、家族と患者との関係性を良好に保ち、再企図予防に繋がっていた。また、限られた時間の中で、行うべき看護を見極めて、看護を組み立てながら家族に関わるものだった。本研究の結果は、家族に行うべき具体的なケアが行動レベルで示されており、自殺未遂患者の家族への関わり方が分からなかった看護師の看護実践に活用できると考えられる。今後は、自殺企図の背景要因による看護実践の特徴や、自殺未遂患者の家族が看護師のケアを受けて感じた主観的ニーズを明らかにする研究が必要と考える。
【引用文献】
衛藤,喜多村,田中,石倉,西村.(2012). 救命救急センターに搬送された自殺企図者の特徴-自殺予防に向けた初回自殺企図及び自殺企図の再発に関する後方視的研究,福岡大医紀要,39(2), 179-189.
Sun Fan-Ko, Ko Chen-Ju, Chang Shing-Ling, Chiang Chun-Ying.(2012).Comparison Study of Post discharge Care Provided to Suicide Patients by Family Members in East and South Taiwan. Journal of Nursing Research,20(1),53-65.
自殺未遂者は、1年以内に60%以上の人が再企図しており、再企図率は高い(衛藤ら,2012)。自殺未遂患者が搬入される救命救急センターは、再企図予防に対して大きな役割を担っている。また、再企図予防には家族が与える影響が大きいと言われている(Sun et el, 2012)。しかし、救命救急センターの看護師による自殺未遂患者の家族に対する看護の詳細については明らかにされていない。
【目的】
本研究の目的は、救命救急センターにおける自殺未遂患者の家族に対する熟練看護師の看護実践を明らかにすることである。
【方法】
研究対象者は、精神科があり、複数の救急看護認定看護師のいる近畿の救命救急センターに勤務する、当該分野の臨床経験年数が5年以上の熟練看護師で、救急看護認定看護師または急性重症患者看護専門看護師、管理者からの推薦者の、いずれかを満たすものを対象とした。半構造化インタビューを実施し、逐語録を質的帰納的に分析した。本研究は、神戸市看護大学の倫理審査の承認を得て実施した。倫理的配慮として、研究への参加は自由であり、研究の途中でも参加を中止できること、個人が特定されないようにすることを、文書と口頭で説明し、同意書を取得した。
【結果】
研究対象者は、女性8名、男性1名で、平均年齢は39.4歳、平均臨床経験年数は17.2年 、救命救急センターでの経験年数は14.2年であり、専門看護師または認定看護師の資格を有するものは7名だった。分析の結果、4つのカテゴリ、15のサブカテゴリが抽出された。熟練看護師は、患者の搬入直後から関係性を創ろうと家族の心情に添って関わっていた。そして、治療中の患者を心配する家族の中で、一番冷静で精神状態が安定している家族を見極めて患者の身体状況や治療への理解を促していた。また、患者に対する家族の気持ちや、自殺未遂前の家族との関係性を予測して、家族と患者に対して、できるだけ悪影響のないような状況を意図的に作り自殺未遂によって患者との関係性が悪化しないように気を配っていた。さらに、家族の状況を捉えて、必要になりそうな社会資源を導入するなどの調整を行い、退院後に患者の変化に家族が対応できるように整えていた。
【考察】
熟練看護師の看護実践は、家族の精神状態を安定させ、家族と患者との関係性を良好に保ち、再企図予防に繋がっていた。また、限られた時間の中で、行うべき看護を見極めて、看護を組み立てながら家族に関わるものだった。本研究の結果は、家族に行うべき具体的なケアが行動レベルで示されており、自殺未遂患者の家族への関わり方が分からなかった看護師の看護実践に活用できると考えられる。今後は、自殺企図の背景要因による看護実践の特徴や、自殺未遂患者の家族が看護師のケアを受けて感じた主観的ニーズを明らかにする研究が必要と考える。
【引用文献】
衛藤,喜多村,田中,石倉,西村.(2012). 救命救急センターに搬送された自殺企図者の特徴-自殺予防に向けた初回自殺企図及び自殺企図の再発に関する後方視的研究,福岡大医紀要,39(2), 179-189.
Sun Fan-Ko, Ko Chen-Ju, Chang Shing-Ling, Chiang Chun-Ying.(2012).Comparison Study of Post discharge Care Provided to Suicide Patients by Family Members in East and South Taiwan. Journal of Nursing Research,20(1),53-65.