第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 6.家族看護①

[OD601] 6.家族看護①

[OD601-04] 救急搬送された患者家族の生活変容と心理的変化のプロセス

○大西 敏美1、市原 多香子1、曽根 綾乃2 (1. 香川大学医学部看護学科、2. 香川大学医学部附属病院)

Keywords:救急看護、救命救急センター、家族看護

【研究目的】
本研究の目的は、救急搬送され救命救急センターに入院となった成人患者をもつ家族が、患者の状況が著しく変化する中で、どのような心理的変化によって生活に適応するのかを明らかにすることである。

【研究方法】
2017年7月から2019年7月の期間において、A大学病院の救命救急センターに救急搬送された患者の家族で、患者が生命の危機を脱し、医師の許可が出た後、看護師長から紹介されたインタビューに同意の得られた家族6名を研究対象とし、研究責任者が半構造化面接インタビューを行った。インタビュー内容は、「患者が救急搬送された時の状況とその時に感じたこと」、「救急搬送後初めて面会した時に感じたこと」、「患者が救急搬送されたことでどのような変化があったのか」、「現在の患者の様子をみてどのような気持ちでどのように過ごされていたのか」などで、研究対象者から得た語りは、逐語録におこした。それをデータとして、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ法を用いて分析した。質的分析の信頼性を高めるために、データの抽象化は研究者間で行い、ディスカッションを重ね常にデータと確認し合いながら抽象化を進めた。また、分析結果は、急性期看護の経験のある研究指導者に提示し、スパーバイズを受けることによって、真実性と妥当性を確保した。

【倫理的配慮】
所属施設の倫理審査委員会で承認を受けた。参加者には研究の趣旨と同意を書面で確認した。面接はプライバシーの保持できる個室で行った。また、面接中は心身の苦痛に細心の注意を払った。個人が特定されないよう対象者は匿名で表記した。本研究における利益相反はない。

【結果】
対象者は、配偶者3名、母親1名、子供2名の6名であった。インタビューで得られたデータを分析した結果、28の概念が見出され、意味内容から14個のサブカテゴリ、8個のカテゴリが生成された。8カテゴリは、【救急搬送されたことにより緊張状態にある】【患者の状態に対して不安が生じている】【患者の現在の状態を受け止めようとしている】【他者からの支援により不安が軽減していく】【自分が中心となって支えていかなければならないという責任感が現れる】【回復していくことで安心感や希望を持つようになる】【緊急入院による動揺や不安から生活に変化がもたらされている】【今後変化する生活への不安が新たに芽生える】であった。救急搬送されたことによる不安や衝撃等の家族の心理状態の変化や介護・面会などの生活に適応しようとする姿勢が見られた。

【考察】
救急搬送された患者家族は、搬送直後の緊張状態から徐々に不安が軽減し、患者の状態を受け止めようとする心理的変化がみられた。これは、身内や医療従事者からのサポート、患者の状態を受け止めようとする覚悟の現れと考える。また家族は、患者の回復と共に、安心感や希望を持つ一方で、自分自身が患者を支えていかなければならないという責任感が生じることにより、家族の生活にも変化がもたらされた。

【結論】
救急搬送された患者をもつ家族は、患者の状態が変化し時間が経過していくことで、不安や責任感、安心感といった複雑な心理的変化を起こした。また、これまでの生活から患者の入院後の生活に適応しようと自らの生活も変容させていることが明らかとなった。