第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 7.看護教育

[OD701] 7.看護教育

[OD701-04] 救急研修で習得した知識及び救命救急処置技術の定着に向けての検討

○田安 晴香1 (1. 福井県立病院救命救急センター)

キーワード:救急研修、救命救急処置技術、救命救急センター

【はじめに】
 A病院では、就職2年目の看護師を対象に急変時の対応や、基本的な救命救急処置技術(以下救命技術)を学ぶことを目的に救急研修を実施している。救急研修では、厚生労働省のガイドラインで定められた救命技術が全て学べる体制を取っている。また、院内コードブルー体制が導入され、看護師の救命技術が求められる機会が増えている。しかし、救急研修の評価は研修直後にしか行われていない。そこで、救急研修で習得した知識・救命技術がどの程度定着しているか明らかにし、今後救命技術定着の一助にしたいと考え本研究に取り組んだ。
【目的】
 救急研修終了1年後に救急研修で習得した知識及び救命技術がどの程度定着しているかを明らかにする。
【方法】
 対象:平成30年度 救急研修に参加した看護師41名
 データー収集期間:研修後(令和元年5月)と1年後(令和2年5月)に調査用紙・テストを施行。
 データー収集方法:研究者独自に無記名自記式調査用紙とテストを作成。調査用紙は、急変時対応回数・技術経験回数の項目を選択式と自由記載式に設定。テストは、迅速・一次評価、救命技術の中から25題設問。
 分析:選択式の調査項目・テストは単純集計。自由記載項目は、類似するものはまとめて集計。
【倫理的配慮】
 A病院倫理委員会の審査を受け承認を得た。
【結果】
 調査用紙・テストの回収数は41名中研修後31名、1年後32名。すべて有効回答であった。調査用紙の結果では、急変時対応回数は研修までに平均1.4回、研修後1年間で平均1.7回だった。迅速・一次評価、応援を要請するという一連の流れを実施した回数は研修までに平均0.5回、研修後1年間で平均0.8回だった。患者異変時、なにかいつもと違うと気づくことが出来たとの意見もあった。救命技術(用手換気・胸骨圧迫・挿管介助)の経験回数は研修までに平均0.2回、研修後1年間で平均0.3回だった。院内コードブルーに参加する機会はあったが、自ら積極的に行えないとの意見もあった。テストの全問正解率は研修後59%、1年後53%だった。胸骨圧迫と人工呼吸の優先度を問う設問に対し研修後と1年後ともに正答率100%であった。しかし、胸骨圧迫する位置の正答率は研修後38%、1年後34%、深さの正答率は研修後45%、1年後15%と最も低かった。モニター波形や除細動の適応を問う設問に対し正答率は研修後77%、1年後81%と高くなった。
【考察】
 看護実践の中で、急変時対応や救命技術を経験する機会は少ない。院内コードブルー体制が導入され、急変時対応の機会は増えたが、救命技術の経験回数の増加には繋がっていない。そのため、経験を共有し振り返りを行う機会が必要であると考える。テスト結果から胸骨圧迫の優先度は理解しているが、位置や深さの正答率が最も低いことが明らかになった。しかし、急変する前の患者状態を意識的に評価しており、研修後より1年後の正答率が高い項目もある。それらのことから、救急研修は学習の動機づけになっており、急変時初期行動を意識させる一手段となっている。高木らは、「特に急変時の対応、身体侵襲を伴う重症ケア、救急救命処置に関する看護技術は経験できる機会が少ないため、意図的に段階を追って学習できるよう計画し経験させなければならない」1)と述べている。今後、研修後も継続的に胸骨圧迫を各病棟で学習できる支援体制を築く必要があると考える。
【引用文献】
 1)高木詠子,大利友美,佐藤真紀子:新人看護師の基本的な看護技術を習得するためのローテーション研修導入の効果,日本看護学会論文集 看護管理,11,P20-28,2012