第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 9.医療安全①

[OD901] 9.医療安全①

[OD901-02] RRS起動機会を増加させるためには   ― 院内緊急コールの分析から ―

○久保田 忍1 (1. 高山赤十字病院 救命救急センター)

Keywords:院内緊急コール、RRS、NEWS

【目的】当院における院内緊急コール(以下HC)症例を分析し、Rapid Response System(以下RRS)構築に必要な課題を見出す。
【方法】1.2013年1月~2020年12月までのHC報告書をカルテより後方視的に、年齢、性別、要請原因、バイタルサイン等を検索した。2.救命救急センター(以下ICU)で急変した23件を早期警戒スコア:National Early Warning Score(以下NEWS)を用いて点数化した。3.NEWSから急変リスクを低、中、高リスクに分類し分析した。
【倫理的配慮】個人情報はデータベース化し、院内倫理委員会において学会発表の承認を得た。
【結果】HC件数は112件で男性71件、女性41件、平均年齢68.7歳であった。70歳以上が全体の69%を占めていた。要請場所は一般病棟が66件(59%)、次いでICUが28件(25%)、CT室7件(6%)、その他と続いた。
20歳以上の院内全体のHC要請原因は、心肺停止(以下CPA)28件、循環不全・致死的不整脈27件、呼吸不全26件、意識障害15件、痙攣5件であった。24時間以内に死亡に至ったのは51件(49%)、24時間以上生存したのは54件(51%)だった。一般病棟のデータでは情報不足しており、NEWSを用いリスク分類することは困難であった。
そのためICUでHCされた20歳以上の患者23件に限定し分析した。HC要請原因は呼吸不全、循環不全、痙攣の順で、CPAで発見された院内全体の要請原因と順位が異なった。更に急変8時間前までのNEWSでリスク分類した結果、高リスク患者14件(61%)、中リスク患者4件(17%)、低リスク患者5件(22%)だった。HC要請後24時間以内に死亡したのは7件で、5件が高リスク、2件が中リスクに該当した。低リスク患者は5件全て24時間以上生存した。また高リスク患者のうち循環器疾患(心疾患の既往を含む)を有していた患者は6件。そのうち5件(83%)が1週間以内に死亡した。5件の高リスク患者のうち4件は、循環器疾患(心疾患の既往を含む)を有していなかった。
【考察】一般的に病棟や外来では頻回にバイタルサイン測定が行われていないため、巡視時に異変に気付きCPAで発見されることが多い。呼吸数の異常は早期に異変に気付くための重要な指標となることから、当院では昨年からRapid Response System(以下RRS)を本格稼働し、呼吸数測定率(記載)に力を入れてきた。今回一般病棟でHCされた患者の呼吸数測定率は17%と低く、NEWSでのスコア化が困難であった。そこでICUに限定し分析を行った。ICUでは重症な患者が多く、NEWS高リスク患者に該当する人工呼吸管理中、循環動態不安定な患者の割合が高かった。一般病棟と比較し、ICUは常にモニタリングしているため呼吸不全、循環不全・致死的不整脈を早期に認識し、適切な蘇生処置を行えた事が、急変後24時間以上生存できた患者が多かった可能性がある。
【結論】HCは一般病棟、その他(外来やCT室)ではCPA、ICUでは呼吸不全で要請されることが多かった。NEWSで高・中リスクの患者は低リスク患者と比較し死亡率が高かった。ICUでHCされた患者のうち、循環器疾患(既往歴を含む)患者の死亡率は高い傾向にあった。ICU以外で急変兆候を早期に発見するためには、呼吸数、呼吸様式などの観察が必要であり、必要時RRSを起動できる教育が重要であると考えられた。