第23回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

オンデマンド配信講演

第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 9.医療安全①

[OD901] 9.医療安全①

[OD901-04] Rapid Response Systemの現状と今後の課題

○表 佳代1、田村 麻衣1、松島 圭吾1、阿部 雅美1、芝田 里花1 (1. 日本赤十字社和歌山医療センター)

Keywords:Rapid Response System、緊急コールシステム、急変の前兆

1 目的
 A病院は平成20年10月から、「心肺停止またはそれに準じた緊急事態」を対象とした院内緊急コールシステム(以下救急コール)を24時間対応で行っている。救急コール事例を検証した結果、看護師は心肺停止以外の要請基準に迷いを生じていると考えられた。会議や研修では、急変の前兆を含めて救急コールの要請ができると啓発してきたが、急変の前兆に対する基準が不明瞭であり、看護師全体への浸透には至らなかった。そのため、Rapid Response System(以下RRS)の必要性を検討し、2020年9月から開始となった。RRS開始後の事例を分析し、今後の課題を検討する。

2 研究方法
1)対象
 2020年9月から2021年5月までの救急コール事例18件とRRS事例8件を対象とした。
2)検証内容
 救急コールとRRS要請があった事例の診療録を遡り、救急コール・RRSを要請した時刻、RRSの要請基準を満たした時刻、要請したのは誰か、急変の前兆やRRSの要請基準を満たすバイタルサインの異常がいつから出現していたかについて検証を行った。
3)倫理的配慮
 すべての事例は、個人情報を匿名化した状態でデータ処理を行った。データは研究が終了した時点で消去する。本研究は、所属施設の倫理委員会の承諾を受けた。

3 結果
1)救急コールについて
 救急コール事例18件中、救急コールまでの間に、急変の前兆やバイタルサインがRRSの要請基準を満たしている事例は66.6%あり、すべての事例において、RRSの要請基準を満たす異常が夜間や休日に出現していた。急変の前兆がみられてから救急コールをするまでの平均時間は7時間30分であった。
2)RRSについて
 RRS要請事例8件中、担当医師からの要請が5件、看護師からの要請が1件、担当医師以外の医師からの要請が2件であった。これらの事例は、RRS要請基準を満たしてからRRS要請まで、平均約9時間15分を要していた。

4 考察
 予測ができないと判断した心肺停止以外の12件(66.6%)の救急コール事例では、約9時間前にはRRSの要請基準を満たし、継続した観察が行われていた。しかし、患者のバイタルサインの異常や急変の前兆があった時点では夜間・休日であり、RRSを要請することは困難であり、結果的に救急コールを要請したと考えられた。ただ、状態が悪化したために救急コールを要請したのか、RRSの代わりに救急コールを要請したのかは、看護記録からは判断できなかった。
 一方、RRSを要請したすべての事例が、要請までに時間がかかっていた。これらの事例は、患者の異変に気付いており、観察の継続や担当医師へ報告し指示を受けていたため、RRSの要請は不要と考えていた可能性がある。看護師からのRRS要請は1件であったが、その理由として、RRSのシステムを理解できていなかった可能性、また、以前、救急コール事例で「なぜこの事例で救急コールを要請したのか」と言われ、RRSの要請を躊躇した看護師がいる可能性がある。
 RRSが開始になり、まだ9ヶ月の経過であり、救急コールとRRSの関連性は明確となっていない状況である。現在、ファーストコールは医師になっており、連絡しづらいという意見があるため、看護師にも連絡・相談することができることを伝えた。看護師の気づきでRRSの要請が増えれば、患者の重篤化を予防し、急変を予防することができると考えられる。

5 今後の課題
 RRSの要請基準を周知することが喫緊の課題である。同時に、病態のアセスメント能力の向上と、RRS要請の時期を逸せず要請できることが課題となる。