第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 9.医療安全②

[OD902] 9.医療安全②

[OD902-04] A施設における院内救急対応システムの導入成果

○須田 貴之1、新名 朋美1 (1. 大阪赤十字病院 救命救急センター)

Keywords:院内救急対応システム、RRS

【背景】院内心停止は、異常所見の時点で適切に対処すれば心停止は回避可能とされており、院内救急対応システム(以下、RRS)が普及しつつある。A施設では2020年7月よりRRSを導入し活動を開始した。A施設のRRSはクリティカル系の専門看護師と認定看護師が要請時の窓口となり主科と対応し、対応困難な場合はRRS担当医がバックアップをする体制で運営としている。また、RRS看護師は病棟をラウンドし、生体モニターの装着患者の状態確認と病棟看護師の懸念に対する介入を担う。

目的】RRS導入前後の院内急変を比較し、活動成果を検証する。

【方法】2020年7月~2021年3月のRRS介入患者を対象とし、診療録から年齢、性別、主病名、主科、要請手段、起動基準項目、介入内容、患者転帰のデータを収集し記述統計を行った。次に、RRS導入前の2019年7月~2020年3月の期間とRRS導入後の2020年7月~2021年3月において、入院患者数、死亡数、院内急変件数、救命率、予期せぬ死亡数、入院1000人当たりの予期せぬ死亡について比較した。統計解析にはΧ2検定を用い、有意水準は0.05を採用した。

【倫理的配慮】集積データは個人情報と連結できないよう記号化し、施設外に持ち出さず鍵のかかる場所で管理した。集積データは分析終了後に破棄した。尚、本内容は所属施設の看護研究倫理審査委員会の承認を得ている。

【結果】RRS介入患者は130名であり、年齢70.3±14.1歳、男性80名、女性50名、主科は外科25名、循環器18名の順に多かった。要請手段は病棟ラウンドが110件、電話要請が20件であった。起動基準は病棟ラウンドでは看護師の懸念が35件と最も多く、不安定な循環15件、不安定な呼吸12件の順であった。電話要請では不安定な呼吸・循環、意識レベルの変調が各7件で緊急を要する内容であった。介入内容は、病棟ラウンドでは主にフィジカルアセスメントの助言、主治医への検査依頼があり、電話要請では輸液や昇圧剤の管理、酸素投与、検査介助、人工呼吸器の調整などを実施した。患者転帰はICU入室9件、死亡1件であった。
一方、RRS導入前の院内急変は37件であり、平日夜間の急変は13件(35.1%)であった。応援要請はCPAが31件、非CPAが6件、救命率は37.8%であった。DNARの取得のない予期せぬ死亡は19件、入院1000人当たりの予期せぬ死亡は1.04であった。RRS導入後の院内急変は30件であり、平日夜勤の急変は11件(36.7%)であった。応援要請はCPAが22件、非CPAが8件、救命率53.3%であった。DNARの取得のない予期せぬ死亡13件、入院1000人当たりの予期せぬ死亡は0.90であった。RRS導入後、院内急変の救命率は向上し、入院1000人当たりの予期せぬ死亡は低下した。

【考察】RRS導入後、院内急変の救命率が向上し、入院1000人当たりの予期せぬ死亡は低下した。これは、RRSの活動が各部署の急変リスクに対する意識を向上させ早期対処に繋がった結果と考える。しかし、平日夜間の急変が36.7%と多くリスク患者の取りこぼしを低減させることが課題である。また、病棟看護師の懸念が要請理由に多くなる要因は、看護師が懸念事を言語化できていないことや電話要請への心理的抵抗などが考えられる。今後はリスク患者の抽出と看護師のフィジカルアセスメントを高める教育に取り組み、院内急変の低減に努めたい。

【結語】RRS導入後、入院1000人当たりの予期せぬ死亡は低下しRRSの活動成果を認めた。