第23回日本救急看護学会学術集会

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[SY] [シンポジウム] AI・ITを活用した救急医療・救急看護の現状と今後の展望

Fri. Oct 22, 2021 4:00 PM - 5:30 PM ライブ1

座長:浅香 えみ子(東京医科歯科大学 医学部附属病院)、川口 孝泰(医療創生大学 国際看護学部)

4:00 PM - 4:25 PM

[SY-01] AI・ITを活用した救急医療・救急看護の現状と今後の展望
―ベッド上からの転倒・転落の予兆をAIで予測する―

○川口 孝泰

本研究は、「転倒・転落」がベッドを起点として発生するものとし、その原因とされる特徴量を設定し、転倒・転落に繋がる動作を予測・検知する手法の開発を目指して検証を行った。開発した手法は、ベッドの脚下4点に工業用の圧力センサを設置し、各点にかかる荷重の時系列変化を記録し、その荷重重心点の時系列変化から、ベッド上での対象者の体動を予測するものである。
本研究は、AIによる機械学習法であるSupport Vector Machine(SVM)を用いた。予測の実施にあたっては、ベッド上からの転倒・転落の前兆と考えられる体動変化の特徴量を決める必要がある。この研究では、特徴量を構成する基本データを2つの基本特徴量を設定した。一つ目は、ベッド4脚にかかる圧の変化を重心点の1点の軌跡変化を捉え、その点の時系列変化をFFT解析し、スペクトル密度の変化により求めた。二つ目は、信号の統計的自己親和性を決定する方法である、トレンド除去変動分析Detrended Fluctuation Analysis(DFA)により重心の変化をとらえた。この2種類のデータを危険動作の予兆判定とした。とくにスペクトル密度は、細分化し、Sp-power、Sp-Peak、Sp-Sharpの3点を特徴量として設定した。また、DFAによって得られた値であるfractal index値、重心点の軌跡面積、単位時間の軌跡長、単位面積の軌跡長、の合計7点を特徴量として設定した。
危険動作として「Reach out」, 「Bed rail」, 「Active」の3種類の動作をSupport Vector Machine(SVM)を用いて教師データとして学習させた。信頼性を確認するために3種類の動作を組み合わせた一連の動きを未知の試験データ(Test data)として実施し、その適中率、再現率をSVMにて解析することで、システムの信頼性評価を行った。これらの過程を経て、予め設定した転倒・転落に繋がる予兆可能性のある「危険動作」の判別を試みた。
今回の研究では、設定した特徴量で、動作時の判別が可能であることが示された。とくにTest dataをSVM で判定した結果では、適中率、適合率、再現率は、ともに高い値を示し、高い判別可能性が示された。また、この研究から、転倒・転落に繋がる動作特徴量の組み合わせの違いで、SVMの適中率が 97.5%と高い値を示したケースもあり、ベッド上の姿勢・動作における判別可能性が高いことが示された。文献によって指摘された危険動作の判別結果では、特徴量からDFAを省いた6項目で適中率が 64.9%、さらに「軌跡面積」の項目を除去し5項目にすると適中率が 79.8%と向上した。これは軌跡面積の時間単位での数値変動の幅が大きく、的中率を妨げる要因になっていたとも考えられ、特徴量の設定が判別に大きく影響を及ぼすことも示唆された。