第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [指定演題] » シンポジウム

[SY1] [シンポジウム1] 救急救命士の医療機関での活用を巡る諸問題

2021年10月22日(金) 15:40 〜 17:10 ライブ2

ファシリテーター:三上 剛人(吉田学園 医療歯科専門学校 救急救命学科)、福士 博之(JA 北海道厚生連帯広厚生病院)

16:30 〜 16:50

[SY1-03] 救急外来に所属する救急救命士の活動の現状と今後の課題

○菊武 正彦1 (1. 福岡青洲会病院  )

キーワード:救急救命士法、院内救急救命士、教育体制、タスクシフト

【はじめに】救急患者の救命率向上を目的に救急救命士法が1991年に制定された。主な就職先は消防機関ではあるが、医療機関に就職する救急救命士も多く存在する。しかしながら、これまでの救急命士法では救急救命処置を実施できる場所に制限が設けられている。わが国は高齢化社会の進展に伴い救急医療の需要が増大しており、その担い手となる医師や看護師等の医療スタッフ不足が指摘されている。このような中で、厚生労働省の救急・災害医療体制の在り方に関する検討会において議論され、救急救命士法改正を含む医療法改等改正法案が提出され、令和3年5月に成立10月1日より施行となる。今後救急救命士による救急救命処置の実施場所の制限が緩和され活動範囲が拡大される。当院は救急医療を担う病院として、社会医療法人の認定を受けた地域医療の中核を担う二次救急医療機関である。年々増加する救急患者に対応する医師や看護師の業務負担の緩和及び診療効率の向上を目的に、2015年に院内救急救命士2名を採用した。業務内容は救急外来での診療の補助や処置介助等に関連する業務、看護補助業務、ラピットレスポンスカーの運用等を主な業務としている。また、DMAT隊員として災害派遣や救急救命士の資格を活かした院内外の救命講習で活躍している。院内救急救命士導入から6年が経過した今、法改正により今後医療機関での救急救命処置が拡大されることで、救急外来での活躍がますます期待される。そこで今回、当院における院内救急救命士の現状と課題を明らかにするために救急救命士の現状の活動に関する調査を実施した。【目的】当院で勤務する院内救急救命士の現状を把握し、今後の取り組むべき課題を明らかにする。【方法】当院で勤務する救急外来の医師1名、看護師17名、院内救命士2名にアンケート調査及びインタビュー調査を実施した。【結果】医師・看護師へのアンケートでは、診療ケア等の業務負担の軽減になっている」「救急隊との連携がとりやすい」などの回答が多かった。一方で「院内救急救命士の教育課程や就職後の教育体制・業務内容や責任の所在・所属部署・存在位置(地位)」など不安や疑問の回答も多くあった。院内救急救命士へのアンケートでは、「保険等の整備が不十分で自分が行う行為に対して不安」「院内で出来る業務(処置)が限られているため資格を十分に発揮できていない」「院内救急救命士としての存在位置が不明確」などの回答があった。希望することとして「院内救急救命士の増員・院内教育体制の確立」等の回答があった。【考察】今回の調査において、院内救急救命士は医師や看護師の業務負担の緩和及び診療効率の向上に寄与することがわかった。しかし、院内救急救命士の業務に関しては整備すべき問題点も多く、今後院内救急救命士としての立場の確立や業務内容及び教育体制を明確にし、チーム医療の一員として救急救命士の資格を発揮できるような体制作りが重要と考える。今回、医療機関で勤務する救急救命士の運用と体制作りについて皆様と検討したい。