第6回日本在宅医療連合学会大会

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一般演題(口演)

01-1:ACP・意思決定

一般演題(口演)8 ACP・意思決定 ほか

Sat. Jul 20, 2024 3:35 PM - 4:25 PM 第8会場 (会議室103)

座長:竹田 幸彦(ひだまり診療所)

3:45 PM - 3:55 PM

[O-1-32] 医療者によるベッドサイドでの楽器演奏の効果についての報告

*長野 宏昭1 (1. いきがい在宅クリニック)

背景 緩和ケア領域における音楽療法はさまざまな研究がなされているが,その有効性は患者の趣向,周囲の状況によって個人差が大きく,定まった知見はない.今回は生演奏を聴きたくてもコンサートに行けない重症患者,在宅医療を受けている患者の元へ赴き,ベッドサイドで生演奏を行った時の反応にスポットを当ててみた. 方法 2012年4月から2024年1月の間,在宅医療を行なっている患者の家に訪問し,ベッドサイドで演奏を行った.対象患者は,患者,家族と医療者と関係性が良好で,事前に患者が生演奏を希望している者とした.演奏はヴァイオリン,ヴィオラ独奏,弦楽四重奏など,1〜4人までの弦楽器による演奏であった.演奏時間は一回当たり5〜10分程度,演奏の効果として, 患者の発した言葉,表情の変化,患者・家族との関係性の変化に着目し,診療録を元に後方視的に内容を検討した. 
結果 演奏を行った患者は14人,年齢は15歳〜83歳であった.患者の発した言葉は,「生演奏で心が震えた」など生音そのものへの感動,「昔を思い出し涙があふれた」など音楽から昔の思い出への懐古などが特徴的だった.涙を流した者は7名,普段にはない笑顔を見せた者は10名,手拍子など音楽と一緒にリズムを取った者は3名であった.また,意識障害のため言葉が出ない患者は2名いたが,そのうち1名には開眼がみられた.
考察 今回の検証では,単に音楽を流すだけでなく,実際に楽器を持参して生演奏を行うことで,空間を振動させる音そのものの迫力,臨場感が加わることでより大きな効果がみられる可能性が示唆された.また,ベッドサイドで演奏を行うことは,患者の尊厳を守り,患者と医療者の関係を超えたもう一つの物語が誕生し,患者・家族との関係性も潤った. 医療とアートの有機的な統合は,終末期を迎えた患者が穏やかさを取り戻す一助になるかもしれない.