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[O-1-34] 病診連携と在宅でのACPが患者と家族が培った強い絆を尊重し在宅看取りに重要であった重症高血圧症・重度精神運動発達遅滞・難治性てんかんのオーバーエイジの一例
【はじめに】重度の精神運動発達遅滞と難治性てんかんで長期の療育支援を受けてきたオーバーエイジの障害者が特発性肺動脈性高血圧症を発症を契機に在宅医療の介入を行い、家族の揺れ動く思いに寄り添いながら、病診連携による医療的介入と病状告知・在宅でのACPを経て、終末期ケア・在宅看取りを行った経験をしたので報告する。 【症例】小児期より重度の精神運動発達遅滞があり療育支援(医療・福祉・教育を含む成長と発育および社会化に重きを置いた統合的緩和ケア)が行われてきた31歳男性。難治性てんかんを発症し、複数の医療機関で精査加療を経て、重度の特発性肺動脈性高血圧症を発症し予後不良のため当院へ紹介。病院循環器内科および神経内科の専門医の併診のもと在宅医療介入を開始。在宅酸素療法また病状の進行に伴い経管栄養療法が必要となり抑制管理が必要となりつつも、本人の自己実現を支援。また福祉施設への通所をギリギリまで行いながら、病状の進行に対して複数回の入院と厳しい予後告知を経て、家族の諦められない気持ちに寄り添いながら在宅で傾聴とACPを行い、終末期の在宅ホスピスケアと在宅看取りを行った。 【考察】日本型施設緩和ケアともいえる「療育」は家族の疾病や障害に伴う強い予期悲嘆とそこからのリジリエンス支援を、ケアニーズである成長および発育の支援という観点から統合的に行う介入手法である。家族は、成人の終末期と比して病者への強い絆とストーリーを持ち特に非がん末期についてはACPにしばしば困難を伴うことが多い。療育環境との連携・病院専門医との連携・専門医療と在宅医療の主治医としてのバランスを柔軟にシフトしながら、本人と家族のライフストーリーを尊重した意思決定支援を行うことで穏やかな最期を迎えることができた。絆を重視し否定せず最期まで希望を支える在宅医療の「揺れるに寄り添う」かかわり方の重要性について考察し報告したい。