第6回日本在宅医療連合学会大会

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ポスター

14-1:臓器不全

一般演題(ポスター)臓器不全2

Sat. Jul 20, 2024 1:55 PM - 2:25 PM ポスター会場3 (コンベンションホールA)

座長:渡辺 剛(渡辺緩和ケア・在宅クリニック)

1:55 PM - 2:00 PM

[P-1-138] 在宅医療における保存的腎臓療法(CKM:conservative kidney management)について

*池田 葵尚1、小原 章央1、八木 悠佑1、川島 和彦、渡辺 康介1 (1. 渡辺西賀茂診療所)

【はじめに】 日本では高齢化に伴い,透析開始年齢の高齢化も年々進んできている.認知症患者や担癌患者においては末期腎不全に至ったとしても透析開始が有益とならない場合も存在し,透析非導入という保存的腎臓療法(CKM)という選択肢の重要性が注目されている.【症例1】81歳,男性.1年前に広範な小脳梗塞を発症され,開頭減圧術と脳室ドレナージを実施された.気管切開術と経鼻胃管による経管栄養をされた状態で施設入所となり,訪問診療開始となった.1か月前に発熱と浮腫のため往診したところ,全身浮腫と検査でネフローゼ症候群による急性腎障害を認め,入院加療となった.基礎疾患のため,腎生検による精査や免疫抑制治療は実施せず,利尿剤による体液管理中心の保存的加療の方針となった.本人は意思決定が難しいため,健康だった時の本人の意向を中心に家族と話し合いを行い,CKMを選択され施設に戻られた.退院して約1か月間,呼吸苦が出ないように注入量の減量などを行いながら療養を続けたが,腎不全の進行による全身状態悪化あり,永眠された.【考察】高齢化に伴い身体合併症を伴う慢性腎臓病患者は増えてきており,末期腎不全に対する選択肢としてCKMの重要性が高まってきている.透析導入の見合わせとその際に実施されるCKMについて,高齢者や重篤な身体合併症を伴う透析導入患者の生存期間はCKMを選択した場合のそれと有意差を認めないとの報告もある.しかし,非がん患者に対する緩和ケアの対象疾患としては,診療加算などの保険点数は重症の心不全にしかついておらず,高齢の末期腎不全患者が緩和ケア病棟に入院することは難しい状況となっている.在宅医療でCKMを実施していくことは,今後益々増えることが予想されるため,CKMに対する理解が必要となると考えられる.本発表は倫理的配慮として,日本医学会の倫理指針に則り個人情報に配慮した.