第6回日本在宅医療連合学会大会

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シンポジウム

12-1:国際性・国際交流

シンポジウム53:アジアのACPの制度と実際の取り組み

Sun. Jul 21, 2024 4:00 PM - 5:30 PM 第2会場 (国際会議室)

座長:余 尚儒(台湾在宅医療学会)、森 雅紀(聖隷三方原病院)

5:00 PM - 5:30 PM

[S53-3] 事前指示とACPに関するわが国の現状と課題 論点整理の必要性

*小川 朝生1,2、櫻井 幸男3 (1. 国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科、2. 国立がん研究センター 先端医療開発センター 精神腫瘍学開発分野、3. 横浜国立大学 地域連携推進機構)

1999年 大阪大学医学部医学科卒業
2004年 大阪大学大学院医学系研究科修了(医学博士)
2004年 国立病院機構大阪医療センター神経科医員
2007年 国立がん研究センター東病院精神腫瘍科医員
現在  国立がん研究センター東病院精神腫瘍科長
日本では年間約160万人が死亡し、その大半は高齢者である。今後2070年まで毎年150万人以上が死亡すると推計され、エンドオブライフ・ケアの質の向上が求められている。加えて、わが国では65歳以上の認知症の有症率も20%を越えていることから、意思決定支援の充実も求められている。わが国では、エンドオブライフ・ケア、意思決定支援への取組みは、ともにガイドライン策定により対応されており、法整備とその議論は進んでいない。海外では事前指示やACPの効果を疑問視する見解がある一方、法と施策の整備は並行して進められている。支援とケアの質の向上と、法制化の議論は、直接に関連するものではないものの、論点が整理されていかない問題がある。実際に、ACPの目的が誤解されたり、意思決定支援の姿勢が変わっていることが臨床現場に周知されておらず、臨床が混乱する懸念もある。このような状況を踏まえ、医療従事者と法律関係者が集まり、わが国のエンドオブライフ・ケアの現状を踏まえ、海外の複数国とわが国との政策の状況について比較を行い、課題の整理を目指した情報収集と検討を行った。オーストラリアでは州法で事前指示を法制化した州があり、事前指示の中に本人の価値観を含めていた。米国では州法のばらつきを是正する目的で、統一医療決定法が2023年に公表され、精神医療の事前指示を含めた事前指示書のひな形が提示されていた。欧州法研究所はEUの財政支援の下で2026年に事前指示統一法を作成する予定であった。一方、わが国では、地方自治体の独自の取組み(例:半田市、横須賀市)があるものの、エンディングノートをはじめ内容はさまざまであった。わが国の事前指示は法的拘束力を持たない緩やかなものであるが、地域医療計画に盛り込むなどの工夫次第で事前指示の作成は実行可能と考えられる。ACPの取組みは行われているものの、その内容はさまざまであり、目的が不明確なまま活動が進んでいる恐れもある。改めて事前指示とACPの情報共有を進めるとともに、論点の整理、議論を深める必要がある。