第6回日本在宅医療連合学会大会

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一般演題(口演)

13-4:難病

一般演題(口演)14 難病 ほか

Sun. Jul 21, 2024 12:40 PM - 1:20 PM 第8会場 (会議室103)

座長:栗田 竜子(いずみの森クリニック)

1:00 PM - 1:10 PM

[O-2-18] 視線入力装置の適応困難だった上肢型筋萎縮性側索硬化症患者が、装着型マウスを導入しiPadを使用できた事例

*古谷 由佳1、馬上 泰次郎1、廣田 洋一1、山田 亜紀子1、小田 泰崇1、山根 伸吾2 (1. コールメディカルクリニック広島、2. 令和健康科学大学)

【はじめに】今回、視線入力装置が不適応だった上肢型筋委縮性側索硬化症(以下、ALS)患者に対して、残存していた頸部筋力を活用し装着型マウスを導入した。装着型マウスの使用状況と3年間使用継続できた要因を報告する。
【症例】80代男性で、重度訪問介護を利用し、妻と二人暮らしである。X年Y月ALSの診断を受け、要支援1となり、訪問リハを開始した。X+1年Y+2月肺炎後、人工呼吸器装着、要介護5となり、頸部・体幹・下肢筋力は維持していたが、上肢筋力は低下していった。上肢でのパソコン操作が困難となり、視線入力装置への移行を試みたが不適応であった。X+2年Y+3月装着型マウスを導入し、3年間iPadを使用できた(日常生活用具で装着型マウスの給付申請)。
【使用状況と経過】座位で、装着型マウス(眼鏡用クリップで固定)と手指スイッチを併用した。iPadは、①AssistiveTouch②ホームボタンに音量調整を追加③画面読み上げを設定した。使用用途は、メモ(日常会話)、LINE、メール、文書作成、インターネット閲覧であった。初期設定後、療法士は動作状況の確認、機能に合わせたスイッチやポジショニングの選定、機器の不具合・修理に対応した。
【考察】症例はiPadの使用により、別宅に住む家族との情報交換、記事投稿、通所施設での長文会話が可能となった。3年間使用継続できた要因は、座位でのiPad使用の習慣化により廃用症候群を予防し頸部筋力を維持できたこと、環境因子を把握している療法士が身体機能の予後予測を踏まえて症例に合った調整を行えたことと考える。ALSの臨床像は多様であり、残存機能を生かすことができる装着型マウスをコミュニケーション機器導入時に選択肢の一つとして検討することも有効ではないかと考える。【倫理的配慮、説明と同意】対象者の情報とプライバシーの保護に配慮し、本人・家族から同意を得た。