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[P-2-55] 転倒リスクの高い患者への在宅退院支援事例の考察
~病院ソーシャルワーカーの立場から
【はじめに】転倒リスク回避優先の思考は、高齢者の在宅生活での葛藤となる。今回、回復期リハビリテーション病棟チーム(以下、回リハチーム)と在宅療養支援チーム(以下、在宅チーム)の連携によって自宅退院した症例を通して、患者本位の退院支援とは何かを考察する。なお、症例報告にあたり学術集会への演題応募における倫理的手続きに関する指針に従って実施した。【症例】A氏、75歳、女性。アルツハイマー型認知症と高血圧の既往あるも、在宅チーム支援下で独居生活。今回、左前頭葉被殻下出血にて急性期治療後当院へ転入院。本人は自宅退院を希望するも、回リハチームは「転倒リスク」を理由に困難として即時の施設入所を勧めた。一方、在宅チームは転倒リスク回避目的の施設入所を選択肢としつつも自宅退院可能とし、本人の希望の実現とQOLを重視した。そこでソーシャルワーカー(以下、SW)が両チームのリエゾン役を担い、協議を重ねた結果、在宅チームの方針が選択され、患者は自宅に退院した。その後2年以上在宅生活を継続している。【考察】病院は、在宅の転倒リスクが高いと考えがちだが、在宅環境はそもそも病院環境ほど統制できない。本症例を振り返ると、在宅チームの回リハチームへの働きかけが、患者の希望する在宅退院の実現に貢献した。その要因として考えられるのは「患者をよく理解していた」「回リハチームを地域包括ケア体制の一員と捉えていた」「病院の思考特性を理解し、回リハチームの方針を予測していた」「方針決定のキーパーソンが医師であることを分かっていた」「SWは回リハチームを含む病院の窓口と認識していた」である。SWはこれらを当該在宅チームの力量と捉え、リエゾン役を担い、回リハチームとの積極的な連携を促した。言い換えると、本人、担当チームと病院組織、地域に関するアセスメントと評価にかかわる実践を積極的に行ったと言える。