R1: 鉱物記載・分析評価

[R1P-14] 山口県美祢市長登銅山烏帽子坑に産するコバルト鉱石

*永嶌 真理子¹、井本 裕二²、森下 幸菜² (1. 山口大・院創成科学、2. 山口大・理)

キーワード：長登、銅、スカルン、コバルト

山口県美祢市には長登銅山，大和鉱山などの銅スカルン鉱床が複数存在する．本研究は長登銅山最大の鉱床である烏帽子坑に産するコバルト鉱石鉱物の記載学的研究を行い，コバルトの鉱化作用プロセスの解明を目的とした．烏帽子坑鉱石の主要鉱石鉱物は黄銅鉱，黄鉄鉱，輝コバルト鉱である．鉱物組み合わせおよび鉱石鉱物の産状より，早期～中期にかけて黄銅鉱，黄鉄鉱が晶出し，黄鉄鉱は砒素を含まない早期のPy-Iと砒素を含む中期のPy-II(< 3.42 As wt.%)に分類される．輝コバルト鉱はPy-IIと同時期に含ビスマス鉱物(自然蒼鉛，輝蒼鉛鉱，エンプレクト鉱，ウィチヘン鉱など)とともに産する．黄銅鉱晶出後の中期～後期に黄銅鉱外縁部に斑銅鉱の成長が確認された．後期の晶出ステージは，マチルダ鉱やへッサイトなど含銀・テルル鉱物の晶出で特徴づけられる．一部の鉱石中に不定形の銀濃集部が認められ，含銀鉱物の分解によって形成したと考えられる．