一般社団法人日本鉱物科学会2019年年会・総会

講演情報

口頭講演

R3: 高圧科学・地球深部

2019年9月22日(日) 09:45 〜 12:00 大講義室 Ib (大講義室)

座長:川添 貴章、大藤 弘明

10:30 〜 10:45

[R3-04] アルゴンの地球内部循環

*小野 重明1 (1. JAMSTEC)

キーワード:アルゴン、状態方程式、溶融温度

常温常圧で気体であるアルゴンは、常温高圧下では固体の状態が安定であるため、固体アルゴンの状態方程式を決定した。そして、固体アルゴンとマントルの平均的な密度(PREM)を比較したところ、マントル条件下ではアルゴンは常にマントル物質より密度が小さいことが明らかになった。数値計算結果からアルゴンの溶融曲線を見積もったところ、大きな圧力依存性を持っていることが予言された。遷移層で2000Kを超え、下部マントルでは3000Kをはるかに超える溶融温度を持つことが判明した。このことは、下部マントル中では、アルゴンは固体として安定であることを意味する。また、上部マントルおよび遷移層中でも、沈み込むスラブのような低温の領域では、アルゴンは固体で存在しうる。一方、アルゴンの溶融曲線とマントルの地温勾配は遷移層最下部で交差する。このことから、マントル上昇流とともに運ばれる固体アルゴンは、遷移層最下部で溶融を開始することが予想される。これらの研究結果から、地球内部でのアルゴンの循環メカニズムを解明する上で、固体アルゴンの溶融温度の圧力依存性が鍵であることが明らかになった。