一般社団法人日本鉱物科学会2019年年会・総会

講演情報

口頭講演

R5: 地球外物質

2019年9月20日(金) 14:00 〜 16:30 大講義室 Ib (大講義室)

座長:橘 省吾、松本 恵

14:00 〜 14:15

[R5-12] 集積岩ユークライト中トリディマイト多形が示す低温領域での熱史について

*大野 遼1、竹之内 惇志2、三河内 岳3、山口 亮2 (1. 東大・院理、2. 極地研、3. 東大・総研博)

キーワード:ユークライト、シリカ鉱物、熱史、トリディマイト、低温

小惑星ベスタの地殻起源と考えられているユークライト隕石は、集積岩・非集積岩の二つのサブグループを持つ。集積岩ユークライトは輝石の離溶組織を用いて冷却速度が求められるなど、地殻形成過程の議論に広く用いられているが、温度領域が限られてきた。本研究では、広い温度領域で多くの多形を持つシリカ鉱物に着目した。特に、シリカ鉱物の一つであるトリディマイトには、例えば六方晶系は400℃以下になると直ちに直方晶系に相転移し、単斜晶系または擬六方晶系に相転移するなど、低温での熱史の議論が可能となる。本研究では3つの集積岩ユークライト中のシリカ鉱物を分析した。3つの隕石には全て単斜晶系トリディマイトが含まれていたが、そのうちの一つであるMoama隕石中には、単斜晶系トリディマイトをホストにして、ラメラ状に直方晶系トリディマイトが存在していた。このことから、Moamaは他の単斜晶系トリディマイトのみを持つ隕石よりも速く冷却されたことが考えられる。先行研究ではMoamaは他の隕石よりも遅く冷却されたと考えられていたが、本研究により、少なくとも400℃以下で冷却速度の逆転が起きたことが示唆された。